セルビア北部はフラットな農場地帯、淡々と進む。
自転車に乗ったカップルに話しかけられた。
かれらも自転車が好きなようで、少し立ち話をして、写真を撮って、別れた。
その後少し進んだところで、パンク。
どうも最近、パンクが多い。
異物が刺さってのパンクではなく、原因不明のスローパンク。
タイヤまたはチューブの劣化だろうか。
通常のパンクであれば穴は簡単に発見できるのだが、非常に小さな穴のようで、なかなか発見できない。
どうしたものかと困っていたら、先程のカップルが車に乗ってやってきた。
「何のトラブル? 手伝えることはある?」
「どうしてトラブルになってるってわかったの?」
「君の写真をフェイスブックに上げたんだよ。そしたら運転中の友人がここを通って、君が自転車を修理しているのを目撃して、僕たちに知らせてくれたんだよ。」
何という連携プレー。
かれらはチューブを持ってすぐ近くのホテルに行き、バケツと水を借りて穴の箇所を発見してくれた。
穴の場所さえわかれば、パンクはすぐ修理可能、無事解決。
今回のセルビア旅行の小さな奇跡。
やっぱ優しい人たちだな。
国境は車での越境がメインで、長蛇の列ができていた。
それも輸送トラックではなく、一般乗用車がほとんど。
自転車は待つことなく、出国も入国もパスポートを渡すだけで、難なくクリア。
国境周辺には両替屋もATMもないが、最寄りの街まで行けばある。
さて、ここハンガリーから、シェンゲンエリアに突入。
今回で三度目だが、例のごとくここからはスーパーダッシュ。
御存知ない方のために、シェンゲンについて大まかに説明。
一部を除いてヨーロッパの大半の国がシェンゲン協定を結んでおり、協定国同士では国境がフリーパスとなっている。
つまり、パスポート的にはシェンゲン協定国の全エリアで一つの国とみなされる。
このシェンゲンエリアは、我々非シェンゲン人は90日の滞在許可。
エリア外に出ればすぐリセットされてまた90日滞在できるというものではなく、「あらゆる180日の範囲内で90日滞在可」というわかりにくい表現が使われている。
入境日からカウントではなく、任意のどの日からカウントしても180日の範囲内で滞在日数が90日を超えてはならない。
今回通ってきたウクライナ、モルドバ、ルーマニア、ブルガリア、旧ユーゴスラビア諸国(スロベニアを除く)などは非シェンゲンなのでのんびりできた。
それからイギリスとアイルランドも非シェンゲン。
↓青色がシェンゲン協定国。
とにかく、こう見えてヨーロッパはけっこう広大、自転車のスピードでは急かされることになる。
まあ物価も高くなることだし、連泊や寄り道はなるべく控えて、さくさくと進んでいきたい。
自転車道!
さすがヨーロッパ、さすがEU。
自転車がちゃんと市民権を得ている。
すべての道がこんな風に棲み分けできていたら、どんなにいいだろう。
車と関わることなく自転車に乗れるというだけで、どれだけストレス軽減されるだろう。
全域でこんなすばらしい環境なのかと期待したが、あっけなく消滅してしまった。
いつも通りの、路肩未舗装の車道を走る。
ガッカリ。
時々、無意味にクラクションを鳴らすバカもいる。
目一杯隅を走る僕にクラクションを鳴らしたところで、これ以上どうしろというのか。
クラクションを鳴らすことでおまえの何が解決するのか。
動物じゃないんだから、言いたいことがあるなら車から降りて言葉で言えばいい。
クラクションだけは鳴らすな。
深夜。
「テントの中で」、何者かの気配を感じて目がさめた。
・・・
部屋にゴキブリが出てもなんら動じない僕だが、さすがにこれは動じた。
テント食いちぎられてた。
狭いテントの中で一晩こいつと一緒に寝る気にはなれない。
バッグの中に逃げ込まれたらやっかいなので、まずはバッグを全部閉めた。
手づかみは難しいだろうから、誘導して靴の中に逃げ込ませ、靴を外に出して追い出し成功。
食料は常時保冷バッグに入れて保管しているが、ゴミ袋は開けっ放しにしている。
ゴミの匂いを嗅ぎつけたようだ。
クマとか猛獣がうろついているような国ならともかく、こんなところでこんな来訪者、想定してなかった。
10014km
Budapest, Hungary