2020年6月15日

隔離生活

2年3ヶ月ぶりの日本。
以前の帰国とはだいぶ感触が違う。
街はなんら変わっておらず、懐かしさも異国感もない。
一晩眠って夢からさめた翌朝のようだ。
鏡に映る自分の顔はしっかり2年分は老けたように見える。
時はちゃんと流れていたらしい。
さようなら平成、こんにちは令和。




検査から2日後、メールが来た。


PCR検査は入国ビザのようなもので、陰性であれば入国は認められる。
でもだからといってそれが免罪符とはならない。
検査の精度は100%ではないらしいし、検査後に感染することもありうる。
なんぴとたりとも潔癖が証明されない時世。
だから証明書は発行されず、唯一形として残るものがこのメール。

自主隔離中とはいえ、外出せずには生きてはいけない。
食事や買い出しぐらいは行かせてください。
でないとコロナの死者数より帰国者の餓死数が上回ってしまいますよ。

ほう。

4人前になるのかな。
1.3Lのお湯が必要。
ホテルの小さなポットでギリギリ。



ダイエットにちょうどいいぐらいの物足りなさ。

ほう。

は?

超特盛丼を頼んだんだけど、店員さん間違えてミニミニ丼を持ってきてしまったのかな。
何だこれ、詐欺レベルじゃん。
味もうまくなかった。
前々から吉野家は好きじゃなかったけど、もう行かん。

以前から気になってたすき家の裏メニュー、キング牛丼。


店のおばちゃんに「これは裏メニューじゃないのよ」と言われた。
そうなの? でもメニュー見たら書いてなかったよ。

ご飯3倍、肉6倍。
これは期待。




ご飯も6倍にしてくれたらいい勝負だったかもしれない。
満腹を知りたい。

自主隔離中とはいえ、電話がないのは何かと困るので、SIMを買い、スマホも新たに買った。
電話を買うことが不要不急の外出だと非難したい方がいらしたら、ごめんなさい。

SIM契約をガイドしてくれた店員は中国人だった。
複雑難解な契約やら料金プランやらを日本語で滞りなく説明できるのは感心。
僕はこの手の契約が本当に苦手で、全然頭に入ってこないのだ。
世界各地でSIMを買ってきたが、契約内容の説明だけでこんなに時間を取らせる国は他にない。
そして書類やパンフレットをどっさりもらった、もういいかげん紙媒体やめましょうよ。
今回のコロナ騒動でも日本のIT化の遅れを思い知らされたんじゃないのか。

コンビニや飲食店も外国人、ホテルの清掃員も外国人。
以前からこういう兆候はあったが、また増加した気がする。
今、アメリカや欧米各国のニュースで、移民国家の地獄絵図が見られる。
日本はどうなっていくのかね。

あ、でも街で外国人旅行者は全然見なくなったな。

歩道を走る自転車が多い。
ドライバー目線だと車道を走る自転車はまったく邪魔ではないが、歩行者目線だと歩道を走る自転車は邪魔だし危ないなと感じる。
でもママチャリ目線だと車道を走るのは怖いんだろうな。

まだ大半の人がマスクをしており、第二波の警戒もしていると思う。
しかし収束ムードでいっぱいだ。
飲み屋街も活気であふれている。

人は忘れようとするもの、楽な方を選択するもの。
今回のウイルスで世界はもう元に戻らないと言う人もいるが、人々は元に戻そうとするだろう。
中南米は今、数字上は絶賛アウトブレイク中なのに、メキシコの人々はすでに元に戻そうとしていた。
さて、どうなっていくのか。



2020年6月10日

メキシコシティ → 成田 フライト & PCR検査情報

メキシコシティ空港
コロナ禍ということもあり、夜間ということもあり、空港は閑散としていた。

今回の荷物はかつてないほど軽量。

重量も余裕で規定内におさまった。
ただ、なぜかカートがなく、自力で担いで引きずりながら運んだ。
いつもだったら、カートなしで運ぶのは不可能。

ラッピングは299ペソ(1499円)。

チェックイン後、荷物検査場へ。
入る前に、健康状態チェックのアンケートがある。
QRコードをスキャンしてページを開き、簡単な質問に答えて、完了したらスクリーンショットして、入口の係員に見せる。

荷物検査はいつになく厳しかった。
機内持ち込み荷物をすべて開けて隅々までチェックされ、所持金まで聞かれた。

出国審査はなし。
荷物検査を通過したらそのまま搭乗ゲートへ。

搭乗
国外から日本の航空会社に乗るのは初めてだ。
CAは全員日本人。
マスクをしているせいか、皆美人に見える。
久々の日本の神接客。
言葉が通じること以上に、安心感がある。

乗客は、7割ぐらいが日本人。
仕事の都合や在住者だろうか、家族連れも多い。
事情はわからないが、見たところ旅行者っぽいのは僕だけ。
日本人以外では、ムスリムがけっこういた。

座席はガラ空きで、3連シートを独占できた。
14時間フライトで満席だったらキツすぎる。

機内で書類がたくさん配られた。
税関申告用紙を除けばコロナ関連ばかり。
ちょっとしたアンケートや注意事項、誓約書にサイン的なものもあった。
ペンを用意しておいた方がいい。

成田空港
6:30到着。
外国人、乗り継ぎの人、到着の人、とグループに分けられて案内される。

到着組は15人ほどで、一緒にまずPCR検査場へ。
ここは撮影禁止、写真で紹介することはできない。

係員から簡単な質問や注意事項を説明された後、検査。
細長い綿棒を鼻の奥まで突っ込まれる。
こんなのは初めてなので少々構えてしまったが、特に痛みもなく5秒で終わった。
子供たちは大泣きして、しばらく絶叫が聞こえた。

検査後も、到着組15人ほどで一緒にまとめて案内される。
入国審査は質問ひとつされずにスタンプが押された。

預け荷物を受け取り、待合室へ。

長時間待つようなので、コンセントの近くを陣取る。
無料の水と軽食が用意されている。

長~い長~い待ち時間。

空港のWi-Fiはゴミレベル。
全然つながらない。
ペンションアミーゴのWi-Fiの方が10倍安定してた。

結果が陰性だった場合でも、14日間は自主隔離することが要請されている。
その間に、厚生労働省からLINEで健康状態の確認メールが来るらしい。

僕はLINEとかいうやつには吐き気がするので使ったことがない。
でも世の中の流れには逆らえない、次に帰国する時には使わざるをえないかもと考えていた。
待ち時間も長いことだし、この機会にインストールしようとしたのだが、WI-Fiがゴミすぎてダウンロードできない。
しかも、LINEって電話番号がベースになってるんだっけ?
僕は現在日本の電話番号は持っていない。
まったく、こんなガラパゴスなアプリを流行らすのはやめて、グローバルに通用するものを使えばいいのに。
結局、LINEをやっていない僕にはメールで来るのだろうか。

14時、ようやく検査結果発表。
無事、陰性。
他の客も皆陰性だったようだ。

結果は口頭で伝えられるだけ。
書面での陰性証明書はもらえず、後日メールが届くらしい。

これで晴れて自由の身。

ではない。

帰宅
帰宅手段も、電車バスタクシーなど公共の交通手段を使わないようにと言われている。
誰かに迎えに来てもらうか、あるいはレンタカーで帰るように要請されている。
家まで車で送るサービスもあるようだが、東京23区内行きで5万5000円。
こっそり電車で帰る者もいるという話は聞いていたが、少なくとも現在は駅への入口で係員が見張っているので止められるだろう。

僕はレンタカーで。
1万6538円。
乗り捨ては高くつく。

運転するのは2年以上ぶりで、いきなり高速、久々の左側通行。
ちょっとうろたえたが、すぐに感覚を取り戻した。
高速代とガソリン代も合計すると、レンタカーで東京まで行くのに約2万円かかった。

前々から思っていたが今回もつくづく、成田空港なんてつぶしてしまえ。
国際便は羽田でいい。
成田は何のメリットもない、ただただ不便でしかない。

18時、予約していたアパホテルに到着。

現在、帰国者2週間隔離のためのキャンペーン中。
1泊2500円、14日合計3万5000円で泊まれる。
長期旅行者の感覚だと高額だが、日本で個室でこの料金は破格。

これで2週間後、ようやく自由の身となる。

長いことメキシコシティの日本人宿にいたこともあり、飛行機もANAだったし、帰国直後のバタバタもあり、日本に帰ってきた実感はまだ味わっていない。

マスクをしているせいか、女性が皆美人に見える。
日本で売っているマスクは白だけなのだろうか、メキシコで売っているマスクはカラーもデザインも多種多様で、黒いマスクをしている僕はもしかしたら目立っているかもしれない。

とりあえず、平成が終わって今は令和とかいう時代らしい。
消費税は10%になったらしい。
エスカレーターに立つのは右だったか左だったか思い出せない。
小銭がとっさに出せない。
あと何か変化あるだろうか。
もうヘトヘト、眠い。
おやすみなさい。



2020年6月9日

経過報告

国外総走行距離 13万6694km
訪問国数 99ヶ国


初めて自転車で旅した時のあのゾクゾク感は、20年以上たった今も自分の中に強くある。
やっぱり僕はこいつが好きでたまらない。
おかげで、日本でも目標を持って生きることができる。


Mexico City, Mexico



2020年6月8日

決断

いったん仕切り直します。

きっかけは、ステムがヘシ折れたこと。

こんなことってある!?


いつものようにサイクリング中、曲がろうとしたらハンドルだけが曲がってタイヤは直進し続けたのでビビった。
事故にはならず、宿の近くだったのも幸いだった。
しかし金属疲労でこんな厚いパイプがヘシ折れるなんて。

それから、少し前の話だが、サドルの革のテンション調整ボルトも折れた。

テンションを上げすぎたせいかもしれない。


特殊なネジでまったく同じものはなく、頭にナットの付いた同サイズのネジで代用。

しかしこれも万全ではなく、しばらく乗っていると先端が傾いてくる。

それから、歯も折れた。
毎度のことなのだが、出発前に歯医者で歯を削られてかぶせものをして、旅を始めると間もなくしてかぶせものが取れて、細くなった歯でしばらく食べ続けると、折れる。
これは本当に、旅に出ると必ず起こるトラブル。
今回は目立たないところだからまあいいけど。
日本の歯医者は腕が悪いのかな。

帰国か続行か、の葛藤はずっと続いていた。
過去に経験したことのない世界のこの状況で、何が正解なのかつかめずに時をすごしてきた人は僕だけではないはず。
特にこの停滞生活は、ただメシを食らい、資金が減って体重が増えるだけの日々。
あ、瞬間的にアウトブレイクした僕の体重は一応の収束を見せ、現在80kgで落ち着いている。

いずれにせよ、ここで無為に日々をすごし続けるよりは、日本で仕事して少しでも資金を増やしながら、自転車その他の装備をリニューアルして、態勢を立て直す時間に当てるのが建設的だとの結論に至った。

いや、帰国が妥当なのは前からわかりきっていたことだが、まだ旅を続けたいこの強い感情を自分の中でどう落ち着かせるかが問題だった。
ステムが折れたりいろんなものがボキボキと折れていくのが何かの啓示にも思えて、踏ん切りをつけた。

一部の国が国境を開けるような情報がちらほら出てきているが、あくまで予定なので実際どうなるのか当てにはできないし、陸路の旅においては一部の国だけでなく全体的に開けてくれないと前進できない。
いつになるのか確定されない解除を待ち焦がれながらここに居続けるのは、あまりに長く非生産的な時間だ。


しかし停泊したのがメキシコシティだったのは本当に恵まれていた。
程良く安い物価、物も豊富で、すごしやすい気候、厳しい外出制限もない。

そして、日本への直行便がある。
経由便だと、経由地が封鎖中の国だったら帰国することもできない。
少し前までAeroméxicoが8万円ぐらいで日本まで飛ばしていたが運休になってしまった。
現在はANAが唯一の直行便。

6月9日2:20メキシコシティ発
6月10日6:30成田着
所要14時間10分
12万3110円

到着後の予定は、PCR検査を受けて、2週間自主隔離する。
陰性であれば隔離は不要だと思うのだが、日本の皆さんに安心して会ってもらえるよう、無意味な形式上のことではあるが要請に従うことにする。

フレームとキャリアとスタンドだけ持ち帰る。


その他はここに寄付する。


今や中南米がホットスポットとなった。
ブラジルやペルーほどではないが、メキシコも絶賛拡大中。
6月から経済活動再開ということだったが、実際まだ閉まっている店が多い。
でも街中は確実に人が増えた。
なるようにしかならねえだろ、というラテンのノリが感じられる。


ずっと自炊が続いていて、久々にタコスを食べたら感動的なまでにウマかった。




屋台のある通りを歩き、ローカルフードを頬張り、「ウマいか、アミーゴ?」なんて言われて、ああ、やっぱり旅っていいな。
帰国の決断はしたけど、旅を続けたい感情はなお強くあり、すっきり晴れやかな気分には到底なれないし、気持ちの整理もまだできていない。
女々しいけど、モヤモヤしたままの帰国となりそうです。

そして、物価が上がり、ペソも上がってきている。
経済的な影響がジワジワと見え始めている。

宿では依然として自炊力がメキメキと上がり、プリンづくりがライフワークとなった。







Mexico City, Mexico

42397km