2019年1月18日

ロンドン 4

イギリスの特性は、何といっても海に守られた島国であること。
ドーバー海峡は最短でわずか34kmだが、潮の流れが速いため敵国の侵入を容易に許すことがなく、「百万の軍隊に相当する」との異名をとった。
大陸の国々のように国境の防衛や隣国との抗争に労力を費やす必要がなく、その分国力を成長させることができた。
海外進出してさかんに貿易し、植民支配でも他のヨーロッパ諸国との競争に打ち勝ち、17~20世紀前半に大英帝国として隆盛を極めた。

18世紀、世界に先駆けて産業革命を果たし、資本主義を確立。
1869年、スエズ運河の開通によってエジプトからインド洋、シンガポール、中国までの海洋ルートを確保。
1884年、グリニッジ天文台を経度0°とし、グリニッジ標準時(GMT)を制定。

第一次大戦後は、世界の陸地の実に23.8%を支配する史上最大の帝国であった。
「大英帝国の最大版図」の画像検索結果

現在の世界の共通語が英語であることなど、当時の大帝国の象徴は今も残る。

反面、島国であることは逃げ場がないということでもある。
もし大陸に強大な国が成立したら、いずれイギリスに攻めてくる。
イギリスはそれを防ぐため、大陸の国々が互いに争うように仕向け、バラバラの状態であり続けるように舵を切ってきた(オフショア・バランシグ)。

そんなイギリスにとって、最大の脅威はロシア帝国であった。
ロシアは不凍港を求めて南下政策を進め、アジアにおけるイギリスのテリトリーを脅かす存在となった。
1813~1907年、イギリスとロシアは緩衝地帯である中央アジアやアフガニスタンで覇権をめぐって対立、直接的な軍事対決を避けたこの二大国の抗争はグレートゲームと呼ばれた。

「栄光ある孤立」と呼ばれたイギリスの外交戦略だが、ロシアの満州進出を防ぐため、日清戦争の勝利で勢いづいた日本と日英同盟(1902年)を組み、第二次大戦ではドイツを潰すため、以前は敵であったソ連と同じ連合国軍として戦うなど、他国との同盟によって勢力均衡を図るという政策転換を強いられた。

第二次大戦で日本にアジアを押さえられたこと、そして最大の植民地であったインドの独立(1947年)、などによってイギリスの国力は衰え、1997年の香港返還でイギリスはすべての植民支配を手放した。

1973年ECに加盟、1993年EU発足後もイギリスはユーロを導入せず、シェンゲン協定も結ばず、難民も受け入れず、基本権憲章にも縛られてこなかった。
大陸の連中とつるむのは嫌だが経済的メリットのために渋々欧州統合に参加してきた、といったところか。

2016年にEU離脱が決定したのは、移民問題が大きいのは言うまでもないが、敗戦国であったはずのドイツが今や圧倒的経済力で仕切るEU(ドイツ帝国の復活?)に対して、歴史的にオフショア・バランシグを行ってきたイギリスは大陸に大きな力がまとまることを望まず、何よりも過去の栄光から来るプライドの高さに起因するものと思われる。

今も残る栄光のひとつ、グリニッジ天文台。










事前情報では、入場料は£9(1276円)。
高いけどしゃあない、せっかくだからと入ってみたら、なんと£15(2126円)。
不意を突かれて引き下がることもできず、払ってしまった。





15~17世紀の大航海時代に人類は航海の技術を発展させたものの、海上での現在地を正確に把握できなかった時代の航海は非効率的であった。
地球の自転に影響されずに測定できる緯度に対して、自転の影響で天体との位置関係を定められない経度の測定は困難を極めた。
18世紀後半、イギリスの時計職人が開発した懐中時計などが経度の測定を飛躍的に発展させ、テムズ川のほとりの丘の上にあるグリニッジ天文台を経度0°とすることが国際的に認められた。







「meridian」は「経線、子午線」を意味するが、「全盛期、絶頂」という意味もある。
まさに象徴的。

これが経度0°、子午線。


運悪くアジア人の集団とバッティングしてしまい、なかなか写真が撮れない。





このラインが世界の東と西の境界。
東半球と西半球をまたぐ。



もちろん、地球上のラインは常に動き続けているので、現在の真の子午線はここから100mほど東にずれている。
赤道のモニュメントなどと同様、ここもモニュメントにすぎない。

この写真を撮るためだけに2126円。
ボロい商売してやがんな。

敷地外にも少し子午線が伸びているので、入場料を払いたくない人はこれでもいいかも。






現在は天文台としては機能しておらず、博物館となっている。
夜になるとここからサーチライトが発射されて夜空に子午線を描く、という話を聞いて夜も行ってみたのだが、そんな光はどこにも見られなかった。







テムズ川の対岸に見えるビル群は、ロンドン中心のシティ・オブ・ロンドンからやや離れた新興金融街。
HSBCやらシティバンクやらのビルが見える。
3月29日のブレグジットに迫られ、金融街も混乱を極めているに違いない。









ロンドン中心より12km南東、グリニッジ天文台より3km南のルイシャムに滞在。













ブリクストンに劣らず、ここの街並みもいい。





宿はVia Lewisham。
ドミトリー1泊£11(1539円)。

ブリクストンの宿とは対照的で、広大な敷地に巨大な建物。




部屋数は130にもおよび、百人単位の学生の集団が利用したりするようだ。
内装もまあまあきれいで、システマチックに管理されている。

コンセントは各ベッドにあり、Wi-Fiもまとも。
ルームメイトは、また国籍不詳の労働者ばかり。
旅人たちは一体どこに泊まっているのだろうか。

この宿の最大の難点は、キッチンが施錠されていることだ。
利用するたびにレセプションに行って鍵を借りなければならない。
冷蔵庫にある飲み物を取りに行くだけでも鍵が必要。
しかも部屋からレセプションまですごく遠い。

もも肉、1kgで£1.60(226円)、激安。


プリン6個、£0.75(106円)。


久々にオムライス!


米2.5合、鶏肉500g、パプリカ1個、のオムライスを乗せられるサイズの皿がないので、鍋のまま食らう。

そして、キッチンには椅子とテーブルがない。
周辺にダイニングルームもない。
なので、立ち食い。



・・・ひどい扱い。
世界中のホステルで泊まってきたが、立ち食いを強いられるのは初めて。

話を聞くと、利用者のマナーがあまりにも悪く、備品の紛失も多いので、こうなったと言う。
過去に何があったか知らないが、新たに来た善良な利用者にとっては、ただただ不便なだけ。
それに、今も食器を洗わない人が多いし、鍵をかけてたところで何の解決にもなっていない。
ただただ不便。

僕が立ち食いしている時、国籍不詳の清掃員が入ってきて清掃を始めた。
「食べ終わったらちゃんときれいにしといてよね! 鍵も閉めてね! 監視カメラあるんだから!」
客に立ち食いさせておいて、しかも食事中に掃除を始めて、よくもそんなセリフが吐けるな。
カメラがあるならチェックして悪者を割り出せばいいじゃないか、望むところだよ。
僕の目から見たら、清掃員の仕事こそまったくなっちゃいない。
説教する立場が逆だよ。

案の定、ドミトリーのベッドで食事するヤツが出てくる。
個室ならともかく、ドミトリーで他人が食事している音や匂いというのは、ただただ不快でしかない。
ルームメイトの国籍不詳の黒人は、クチャクチャ音を立てながら、匂いを室内に充満させながら、大声で長電話をしている。
こういう人の、他人に対する配慮のなさは絶望的だ。

ついさっき片付けたばかりなのに、もう誰かが食器を放置してる。


まったく、どいつもこいつも・・・


London, UK