2020年3月22日

トリニダ

毎日同じことの繰り返し。
街に到着するのも憂鬱でしかない。
どうせまたカサでも「No!」、店で「コーラある?」と聞けば「No!」、と否定され続ける。

進むにつれて、状況はさらに悪化。
宿代の相場が25CUC(2690円)と跳ね上がった。
今までの経験上、料金が上がるほどサービスが悪くなるという傾向がある。
高いカサは、部屋の内装がホテルのように豪華になるだけで、朝食が付かないし、冷蔵庫のコーラが1.5倍の価格だったりする。
内装なんて質素でいいから、身になるサービスをくれ。
しかし本当に不思議、街中で感じる絶望的な物資の欠乏からは想像できない、立派な家具やら装飾品やらはどうやって調達しているのだろう?

一方で、見るからにボロい家屋も多いし、都市部では「金くれ」とか「タバコくれ」とか言われることも多い。
社会主義の理念である「格差のない平等な社会」はやはり実現されていない。

追い風フラットの好条件でも、日に日に力が抜けていく。
走行中は昼食にありつけることはないので、カサで朝食が付かないと、1日の食事は夕食のみとなる。
その唯一の食事も、街中で炎天下を歩きまわってようやく見つけた店がひたすら喉が渇くハンバーガーとかピザとかだったり、うまくいかない時はコーラ1本も見つけられない。
ここは地獄だ。
西アフリカの時と同様、栄養失調待ったなしコース。

飢えと渇きで憔悴しきって街をさまよっている時、女子学生たちが僕を見て「チノー!」「チノー!」と騒ぎ立てる。
「中国人=コロナ」ということか、すれ違う時に僕に近づかないようにわざとらしく大げさに迂回する。
くだらんやつらだ。
やっぱりキューバが教育に力を入れているという話は大ウソだ。

僕も誤解されたくないので、宿に泊まる時は「日本人だけど日本から来たわけじゃないよ」と言う。
すると宿の人は、僕が何を言わんとしているのかをすぐに察して「大丈夫、問題ないよ」と言ってくれる。
浅はかな偏見を持つのは一握りの愚民だけだと思いたい。

高いカサでも、運が良ければ朝食が付く。
ホットミルク、コーヒー、手作りジュース、と3種の飲み物が出る。


ふだんは寝起きにこんな水分摂らないが、キューバ走行はサバイバル。
出されたものはありがたく一滴たりとも残さず胃に流しこみ、1日の苦行に備える。

キューバのコーヒーは濃厚で最高においしい。

エスプレッソのようなキツさはなく、アメリカンのように薄くなく、アラビックのような粉っぽさもない。
砂糖はデフォルトで入っている。
僕はいつもは砂糖とミルクをこれでもかというぐらいドバドバと投下するが、キューバのコーヒーは何も足さずそのまま飲める。

Wi-Fiカードは、ハバナで5枚(5時間分)買っておいたのだが、とっくに使い切ってしまっていた。
正確にはそのうち2枚はほとんど使ってないのに知らぬ間に吸い取られていた。
ハバナではその辺の売人から簡単にカードを買うことをできたが、他の街では入手困難。
どこかしらで売っているはずだが、探しまわってもまた余計に喉が渇くだけなのであきらめて、しばらくオフラインな日々。

トリニダ。

ここもなんか観光地らしい。








どこの街でも配給行列。







サンティアゴデキューバの案内人からもらった安宿情報は、ほとんどが手書きだったので解読できなかったが、トリニダに関してはビジネスカードでもらったので無事たどり着いた。


とても人のいいおばあちゃんの宿。
他に白人旅行者もたくさん泊まっている。

1泊20CUC(2152円)。
夕食10CUC(1076円)、朝食5CUC(538円)。

他の宿は朝食なしで25CUC(2690円)というところもあったから、ここはリーズナブルだと言える。
食事代がやけに高いが、もう節約は忘れよう。
生命維持を第一に考えて、朝夕2食をオーダーした。

ただどこへ行っても、宿泊も食事も5CUC刻みなのが気になる。
ふつうはもっと切れの悪い額になるのが自然なのだが。

冷蔵庫を開けると!


やったー!
今までの冷蔵庫はビール8割コーラ2割ぐらいだったが、ここは半々ぐらい。
よく見たらファンタオレンジ的なものもある、すごい。
価格は標準価格。

一度緊張の糸が切れると、出費は気にせずガブガブと飲み続け、止まらない。
もうどうにでもなれ。

Wi-Fiカードも、ここのおばあちゃんから買うことができた。
宿のWi-Fiに接続するのは怖いので、街の中心広場まで行ってネットをやった。

夕食。

トマトはいつも輪切りなのね。

朝食。

だんだんパワー復活してきた。
満たすべきものが満たされると、機嫌も良くなってくる。
ブログの攻撃的口調も和らいでくる。

カサで朝食が付くかどうかがすごく重要。
料金に関わらず朝食が付かないカサはできるだけ避けた方がいい。

出発する時、次に泊まる街のカサのビジネスカードをもらえることが多い。
こういう紹介制はとてもいい。
自分でぶっつけで見つけるカサよりも、紹介でつながるカサの方がハズレがない。





大まかに、キューバの東側は1泊20CUC(2152円)、朝食は込みのところが多いが別料金の場合は3CUC(322円)。
西側は1泊25CUC(2690円)、朝食は別料金のところが多く5CUC(538円)、が相場のようだ。
Wi-Fiカードは、西側では街の売人や宿でも入手できることが多い。


バラデロとかいうビーチリゾート。



ここもカサでことごとく断られ続けた。
ようやく見つけたが、やはりビーチリゾート価格、朝食別料金で1泊30CUC(3228円)。
しかも冷蔵庫にコーラなし。

灼熱のビーチリゾート、コーラを求めてさまよう。
Tシャツやよくわからん土産物を売っている店があると、「アホか!」と叫びたくなる。
生命を維持するのに必要なものを売ってくれよ。
チェ・ゲバラのTシャツなんて世界中で売ってるわ。

ようやく飲み物を売ってそうな店を見つけると、水とビールしかないと言う。
ほんっと、最悪。
僕がこの世で最も必要としない飲み物、それは水とビール。
水とビール以外の飲み物を売ってくれ。

ああ、渇く、、、干からびる、、、

さらにさまよって、ようやくコーラ発見。
いつもこの瞬間、これで一晩乗り越えられる、とホッとする。

翌朝。
カサのおばちゃんから、「キューバも数日内に飛行機キャンセルで封鎖される、ってニュースでやってたわよ」と聞いた。
なんと、、、それは由々しき事態。
おばちゃんの話は正確なところはわからず、ここはネットもつながらないので事実確認できない。
瞬時にいろんなことが頭をよぎった。
他の国ならともかく、キューバに閉じ込められるのだけは勘弁。
急いだ方がいい。

バラデロからハバナまで140km、2日かけて行くつもりだったが、ダッシュで1日で行こう。

途中の街の広場でWi-Fi接続し、メキシコシティへのチケットを確保。
すでに中南米の大半の国が続々と入国制限、国境封鎖している。
とりあえず経過を見守るため停泊するなら最適なのはメキシコシティ、と判断。

すばらしい追い風に助けられた。
朝遅くに出発したが、好調にガンガン進む。








ハバナに到着。
閉まっている店が多く、閑散としている。
とうとうここにも波が押し寄せてきたことを実感。

入国直後に泊まったカサシオマラに戻った。
おばちゃんは僕のことをおぼえていてくれた。
しかし、この宿も閉鎖だという。
この時点で宿泊禁止となっていたが、知った顔だし1泊だけということで、泊めさせてもらった。

今日、メキシコシティに飛ぶ。
チケットはとれたものの、果たして万事うまくいくのか、どうなるかわからない。
メキシコは入国できるはずだが保証はないし、宿が閉鎖されていたらどうするか。
ちょっとドキドキしてる。



La Habana, Cuba

40539km