2019年12月18日

バハカリフォルニア 1

エンセナーダは思ってた以上に大都市で、宿を出た後もしばらく街が続き、ウォルマートやコストコもあった。

しばらくすると、メインロードの車道以外は乾いた土となり、砂が舞う。

新調して間もない自転車パーツがみるみる砂を噛んでいく。

海沿いに道をつくってくれればいいのに、内陸の山道へ。


アップダウンはだるいが、幅広の路肩があるのはいい。

人口密度はほどよい。
割と短い間隔で街があり、店も宿もある。

途中、軍の検問があった。
スペイン語で簡単な質問をいくつかされ、すべてスペイン語で返答できた。

僕のスペイン語レベルはまったくたいしたことないが、初歩的な文法や単語は記憶に刻まれているし、スペイン語は英語より断然聞き取りやすい。
ただ、この基礎レベルの壁を越えてその先へ行くのが簡単ではない。

小さな街で1泊。


やはり舗装されているのはメインの車道だけ、あとは乾いた土。

メキシコで気づいた変化、もう二点。

貧しい国、特にアフリカと中南米では、買い物する時は店にバッグを預けなければならないところが多い。
僕はこれが本当に嫌いで、しかも婦人の肩掛けバッグや手下げ袋はOKだが僕のバッグやリュックはいつもNGで止められるという謎のクソルール、過去に幾度となく警備員とモメてきた。
納得できるような理由を説明してくれたら従ってやるよと詰め寄って、納得できるような理由を説明してくれた警備員はいまだひとりもいない。
ただバッグを持って店に入ったというだけの客をまるで犯罪者のような目で見る警備員の態度も無礼きわまりないし、何よりも客の所有物を預かるというのにセキュリティも整っていないのはおかしい(僕はニカラグアのスーパーで店員にカメラを盗られた)。
しかし今回のメキシコ、どの店もバッグを持ったまま入っても何も言われず、荷物預かり所も存在しない。
メキシコだけでなく中南米全域でこのくだらない風習が撤廃されていればいいのだが。

もう一点。
イヌに追いかけられる頻度が減った。
中南米といえば日々獰猛なイヌに追いかけれられた記憶があるが、今回のメキシコでは1日に1~2回程度。
もっと田舎の農村に行けば頻度が上がるかもしれない。

経済が発展するということは、ただ金銭的に豊かになるというだけではない。
交通マナー、ノイズ、環境保護、モラル、礼儀、イヌの管理など、一見経済とは無関係と思えることも同時進行的に改善されていく。
旅をしていて肌で実感するのはこういうことだ。
アメリカでは没落を感じたが、ここメキシコでは前進がはっきりと見える。
ただ、街や河川のゴミの多さ、環境汚染の改善はまだ時間がかかりそうだ。
中国やインドも同様だが、あちらは人口がケタ違いなので、さらに長い時間がかかると思われる。
そしてアフリカは、、、次世紀に期待?

路肩消滅。

交通量は多くないので危険度はそこまで高くないが、路肩がなくなるというだけで一気に緊張感が高まり、気を緩められない。

巨大なRVをよく見る。
アメリカ人が国境を越えてメキシコを旅しているようだ。
大型トラックも多いし、なんでこんなギリギリの幅の道しかつくれないのか。

また小さな街で1泊。


この辺の宿は400ペソ(2310円)が相場のようだ。
アメリカと比べたらぐっと安くなったが、世界旅行の標準からするとまだまだ高い。
Wi-Fiは概ね良好、お湯も出るし、大きな欠陥はない。
こういうモーテルタイプの宿は、なんといっても階段なしで自転車をそのまま部屋に入れられるのが楽でいい(2階の部屋に行かされることはあまりない)。
デメリットは、他の客は部屋の真ん前に車を停めるのだが、エンジンを長時間つけっぱなしにするヤツが必ずいて、うるさい。
こっちの車のエンジン音は本当にうるさいし、長時間つけっぱなしにする理由もわからん、迷惑。



たまにはレストランで。

左にあるトルティーヤ(トウモロコシの粉からつくられた生地)でおかずを巻いて食べる。
うまい。
久々に、食文化を感じる。
トルティーヤは追加できる。
コーヒーも合わせて計130ペソ(751円)。
これもやはり、アメリカに比べたらぐっと安くなったが、世界標準からするとまだまだ高い。



次第に街の間隔が長くなり、人口希薄になっていく。
メキシコの電波はアメリカよりだいぶ良好だと感じていたが、この辺から電波消滅。





リュウゼツラン。


茎っていうサイズじゃない。






つぼみっていうサイズじゃない。









海沿いに道はつくれないのか、また内陸の山道。

海岸も地形が険しいのかもしれないが、どのみち険しくなるのなら海に近い方が安心感があると思うのだが。
なぜあえてこんな無人の山の中にだけ道を通してしまったのか。







なんともユニーク、ブージャムツリー。


バハカリフォルニアの固有種で、ルイス・キャロルの物語からその名が付けられた。
たしかに物語に出てきそうなシュールなルックス。

これは茎ではなく幹なのか、無数の枝が生えている。



ピント合わせられなかったが、耳の大きなウサギが生息している。






おもしろい。
厳しい環境下でニョキニョキと伸びる奇妙な植物たちの世界。




宿のある村までたどり着けず、野宿。

野宿に適した場所はたやすく見つけられる。
トゲだらけのようだが、サボテンの間を縫っていけばトゲは避けられる。
今のところパンクもしてないし、テントも無傷だ。
地面は硬すぎず柔らかすぎず、ペグがしっかり刺さる。
人に見つかることもまずないだろう。
メキシコといえばとにかく暑さに苦しんだ記憶があるが(13年前は9~10月だった)、さすがに12月だとすごしやすい気候、野宿も苦ではない。

テント地のすぐ近く、こんなところにも墓碑が。


月が強烈に明るく夜空を照らす。
冬の大三角形も負けじとキラキラと輝く。
無数のサボテンのシルエットが浮かぶ。
幻想的。
この感じ、こういうのは写真には撮れない。
どんなに高性能なカメラがあったとしても、これは撮るもんじゃない。
心を無にして、ただただ感じる。



村で食料補給。

座ってパンを食べだすと、必ずイヌが寄ってくる。

あげるヤツがいるから寄ってきちゃうんだよな。




非常に強い追い風。
フラットな直線だったら余裕で150kmぐらいいけそう。
しかし山道でカーブが多いため、カーブ具合によっては横風や向かい風になることも多い。
路肩なしの狭い道で横風を食らってハンドルがブレるのは怖い。
アップダウンも相変わらず。
せっかくの追い風なのに恩恵をあまり受けられず、ペースは良くない。


しかしこの日のラスト、緩やかな下りの直線となり、しかも真後ろから猛烈な風に押された。
まったくこがず、ただ座ってるだけで30~50km/h。
たった50分で30kmかせぐことができた。
数年に一度ともいえるボーナスステージであった。
この好条件に乗っかってもっと進みたかったが日は短く、16時半には日没。

また野宿。

翌日。

風はさらに猛威を奮い、とんでもなく吹き荒れた。
フラットな直線だったら余裕で200kmぐらいいけそう。
あいにく道はまたカーブの多い山道。
横風となり向かい風となり、行く手を阻まれる。
横風が本当に怖い。
こぐことができずに歩いていても、何度か自転車ごと押し倒された。
バハカリフォルニアがこんなすさまじい暴風地帯だなんて、知らなかった。
パタゴニアやアイスランドにも匹敵する。

やがてアップダウンがなくなり、フラットな直線となった。
昨日のラストと同じ条件。
さあ来い、もう一度ボーナスをおくれ。
と思ったら、不意に風はやみ、無風となってしまった。
なんだよ。

ゲレロネグロという街に到着。
禍々しい響きの名だが、意味は「黒い戦士」。
大きな街ではないが、ホテルがたくさんある。
ホエールウォッチングで知られており、アメリカ人がよく来るようだ。


これだけ立派で350ペソ(2022円)ならリーズナブル。
間近で見ると細部はけっこうボロボロだったりするが、リラックスできる。



Gerrero Negro, Mexico

34913km