イギリスの探検家ジェームズ・クックと。
13年前の2006年6月、初めての世界旅行の出発点がここアンカレッジだった。
あの時は何もかもが初めてで、あらゆることに驚き、あらゆることが刺激的で、異国の地を踏みしめていることを全身全霊で感じた。
もちろん、あの頃の自分に戻ることはできない。
一度旅した場所をもう一度旅するということはめったにやらない。
ただ、今までずっと未知の土地を旅し続けてきた反面、僕には原点回帰の習性もある。
もう何年も前から、アメリカ大陸をもう一度やりたいという思いに駆られてきた。
この大陸自体が魅力あふれるものだからというのもあるが、また原点に帰って、今の自分の感性でもう一度味わってみたい。
とりあえず、リアディレーラーが破壊されたことで走行不能状態、空港から動けず。
あらかじめ連絡を取り合っていたWARMSHOWERSのホストに車で迎えにきてもらった。
アラスカ。
アメリカ合衆国最北に位置する最大の州であり、世界最大の飛び地。
日本の4.5倍の面積に、人口73万人。
13年前はたしか60万人といっていたから、ちょっと増えた?
人口密度は0.4人/k㎡(人口密度世界最小国のモンゴルが2人/k㎡)。
全人口の半数近くがアンカレッジに集中している。
ユーラシア大陸とアメリカ大陸が陸続きだった氷河期に、東進してきた人類はアメリカ大陸へ渡り、インディアンやエスキモーが長らく居住してきた。
18世紀にロシアの探検家ベーリングがアラスカに上陸した後、アラスカはロシア領となった。
ロシアはクリミア戦争で財政難に陥り、また宿敵のイギリスに領土を奪われることも牽制して、1867年、当時中立であったアメリカにアラスカを売却した。
当時のアメリカ国務長官は「巨大な冷蔵庫を買った男」と国内で揶揄されたが、後にアラスカには金鉱や油田など豊富な地下資源が眠っていることがわかり、また冷戦以降のロシアの勢力拡大を防ぐ防波堤としても、アラスカは評価されるようになった。
日中20℃。
日の出4:23、日没23:35。
深夜も完全な暗闇にはならない。
大都市感はない。
やや背の高いビルがポツポツと点在している程度。
土地があり余ってスカスカな感じ。
交差点には物乞いのような先住民が座っていたり、「CAR WASH」と書かれた紙を持って立っていたりする。
これは13年前から変わってない。
というか、何も変わってない?
ダウンタウン。
屋台で売られているのはシカ肉のソーセージ、US$6.50。
買わん。
ステーキなら考えちゃうが、ソーセージにしてしまったら何の肉かもわからんし。
今も昔も、アメリカで買い物といったらウォルマート。
食料から日用品、衣類、家電、アウトドア、銃まで、ここに来れば何でもそろう。
こういう店はすべて平屋で、広大な敷地を端から端まで歩くだけで一苦労。
スケールの違いを改めて実感。
このウォルマートは市街地にあるのでやや小さめの規模ではある。
アウトドア用品は本格的な店だと高くつくので、僕はウォルマートで買ってしまう。
テント購入。
床面積2.1m✕2.1m、高さ1.3m、重量3.7kg。
US$99。
物価は非常に高い。
アメリカの他の州と比べて、アラスカはずば抜けて高い(ニューヨークの中心地とかは知らない)。
スーパーの商品は軒並み割高で、本当に必要な物以外は何も買えない。
13年前はユースホステルに宿泊し、たしかドミトリー1泊US$20だった。
現在そのYHは閉業してしまい、他の宿はドミトリーでもUS$30以下は存在しないようだ。
キャンプ場でもテントを張るだけでUS$30近くする。
大好物、ジェリービーンズ。
これは一度食べ始めたら本当に止まらない。
非常に中毒性の高い危険な代物。
ショッピングモール内のAT&TでSIM購入。
1ヶ月有効8GBでUS$50。
ビックリするほど高いが、これは別にアラスカ価格ではなく全米共通だと思う。
ヨーロッパのvodafoneでも、5GBで1800円ほどだった。
でもたとえば、US$25のキャンプ場に2泊したらもうUS$50だ。
スマホを駆使してWARMSHOWERSのホストと連絡を取ることができれば、宿泊費ゼロですむ日が増えて、結果コスト削減となる。
WARMSHOWERSはアメリカ発祥。
旅人に部屋を提供するホスピタリティは、ネットが普及するはるか以前よりアメリカには根付いている。
最大手アウトドアショップ、REI。
アウトドア大国。
本当にスケールが違う。
アウトドアの普及度が違う。
店内でパシャパシャ撮りたい衝動に駆られたが自粛した。
REIではないが、Sportsman's Warehouseというこれまた巨大なアウトドアショップで靴購入。
Timberlandの防水トレッキングシューズ。
US$109。
アメリカは、すべての単位が他の国と異なる。
長さはマイル、ヤード、フィート、インチ。
重さはポンド。
体積はガロン。
温度は華氏°F。
でも店で売られている商品はだいたい2つの単位で併記されているので、いちいち計算しなければならないわけではない。
靴も、ちゃんとcmでのサイズも表記されていた。
ただし、道路標識の距離表示はマイルのみなので自分で計算しなければならない。
一番計算がやっかいなのが温度の°Fで、これはもう僕はあきらめている。
いいかげん素直にグローバルスタンダードに合わせればいいのに、頑固なアメリカさん。
床屋に行った。
洗髪洗顔などのサービスは一切なし、カットのみでUS$20。
最重要の自転車修理。
「ものすごい距離を走ってきたんだね」と言われた。
「so many miles」という表現がいかにもアメリカ人らしい。
ヨーロッパの雨、サハラの砂、西アフリカの泥で腐りきっていた駆動系パーツを一新。
リアディレーラー、スプロケット、チェーン交換。
チェーンリング、ボトムブラケット交換。
プロが取り付けてくれたから、もうネジが緩むなんてこともないだろう。
計US$350。
高い。
駆動系を一新するだけでこんなかかるはずはない。
レシートを見ると、ひとつひとつのパーツがべらぼうに高い。
どうしてこんなに高いのだろう?
いやー、金使ったなー。
アンカレッジに着いてから走行態勢を整えるのに、US$800以上使ってしまった。
宿泊費はゼロにおさえたにもかかわらず。
飛行機代も合わせると、この数日で軽く25万円は吹っ飛んだ。
アメリカでも日本食の普及っぷりがすごい。
アメリカでもヨーロッパでも、以前は探せばどこかにあるぐらいだったが、今はあちこちで日本食の店が目に入ってくる。
マックシェイクの上にホイップクリームがのっかってるなんて、ステキ。
ビッグマックのセットにアップルパイを付けて、US$11.75。
とんでもないごちそうだ。
他の州だったらいくらぐらいだろう。
お世話になったWARMSHOWERS宅。
アラスカにマンションとかアパートって存在するだろうか。
全部一戸建てのような気がする。
若い夫婦と1歳の娘さんがここで暮らしている。
家族は1階だけを使用しており、2階は使っていないので自由に使っていいとのこと。
広々とした庭。
土地が広いっていいことだ。
ヨーロッパのWARMSHOWERS宅もそうだったが、ガレージには人数分以上の自転車、パーツ類、工具一式がそろう作業場となっている。
日本の一般家庭にはまず存在しない振れ取り台なんかも備わっている。
一般家庭に連泊するのは気が引けるが、何泊でもしていいよと言ってくれた。
自転車修理と必要物資の買い出しで3日かかったが、それよりも体力の衰えが激しい。
西アフリカのひどい食環境、マラリアの高熱、40時間のロングフライト、と強烈なパンチの連続だった。
自転車で街中を周っただけでグタッと疲れ、身体に栄養が足りていないのを感じる。
正直、ごちそうにも期待してしまうが、ここの家庭もベジタリアン。
ヨーロッパのWARMSHOWERS宅も大半がベジタリアンだったが、アメリカもそうなのだろうか。
食事の量も決して多くはなく、この食生活でどうしてあんな立派なガタイに育つのか不思議でしょうがない。
でもアラスカという土地柄、魚は食べるようだ。
奥さんは元空軍で、身長182cmぐらいあるだろうか。
とてもやさしい人だが、女性から見下ろされて話をするのは威圧感がある。
今日で4泊目。
明日には出発する。
Anchorage, Alaska, USA