2019年6月17日

グレンハイウェイ ~ パークスハイウェイ

朝、いきなり道を間違えて往復13kmほどムダに走ってしまった。
夏の極地方のいいところは、日没を気にしなくていいことだ。
日没は23~0時、朝のスタートが遅れようが、どんなにのんびり進もうが、暗闇走行する心配はない。

グレンハイウェイ。


13年前は最初からハイウェイの路肩を走った記憶があるが、今は禁止されていて、歩行者自転車用の側道がつくられている。

お!?


走行開始初日にして、さっそくのお出まし。
しかも自転車道、僕の進行方向50mほど。
まだ若いのかな、サイズ小さめのブラックベア。



クマはハイウェイの方へ向かおうとしたが、車がバンバン走っている。
引き返して、フェンスの隙間を見つけて森へと消えていった。
こんなところへ出てきてしまって、怖かっただろうね。



新品のチューブで走り出したのに、さっそくパンク。
夏の極地方の嫌なところは、すさまじき蚊の猛襲。
パンク修理するにも、まずは虫除けスプレーしないと全身ボコボコにやられる。
服の上からも刺すし、頭も刺す。
アラスカからカナダにかけて、蚊との壮絶なバトルが繰り広げられる。

自転車道というのは、そのままずっと続いてくれるのならこの上なく快適なものだが、今まで毎度毎度裏切られてきた。
街中へ入ると、複雑なローカルロードへと導かれる。


標識があるうちはいいが、いつの間にか標識もなくなり、どっちへ進めばいいのやら惑わされ、ついに自転車道自体も消失。
結局ハイウェイへ。


都市圏を完全に抜けたら、ハイウェイは自転車通行可になるようだ。
他にルートはないのでここを走る以外ない。

時折街が現れ、スーパーやマクドナルドがちらほら見えたりしたが、次第に人口希薄になっていった。

この日のWARMSHOWERSのホストは、神父さん。


この辺りは、人口希薄な割に教会が数多くある。
信心深い人が多いようだ。



腹ペコで疲れきって、すぐにメシ食って休みたいところだったが、7~8人が集まって聖書の読み合わせみたいなのをやっており、僕も参加させられた。
ひとりの女性が、スマホを僕に手渡して見せた。
聖書アプリの日本語版で、「今ここを読んでるから」と教えてくれた。
どうもご丁寧に。

僕は宗教には少し関心があるし、聖書はちゃんと読んだことはないがキリスト教のエッセンスは何となくわかっているつもりだ。
でもそれはあくまで客観的に、他の宗教や文化や世界観と比較する上であって、本気でキリスト教を信じて他の価値観を認めず盲信的になっている人たちとは議論できない。
神父は進化論をきっぱりと否定し、この世のすべては神が創造し神によってデザインされていると断言した。
眠い。

それからひとりの男性が肩の痛みを訴えており、皆で彼の肩に手を当てて祈った。
これで治ると本気で信じているようだ。
キリスト教ってこんなシャーマンみたいなこともやるの?



神父の奥さんはとても世話好きな人で、手作りパン、手作りジャム、ピーナッツバターを僕に持たせた。
これは実にありがたい。

寝場所は教会の地下。
Wi-Fiこそないが、トイレ、シャワーなど必要なものは完備されている。
もう22時近くになっていただろうか、神父はギリギリまでジーザスの教えを僕に説き続けた。
寝させて。
ここでは宗教はビジネス、布教は営業、としか思えなかった。

パークスハイウェイ。


晴天に恵まれ、広い道路、完璧に調整された自転車をこぐ。
こんなに気持ちいいものはない。

はるか前方にデナリがそびえる。


北米最高峰(標高6190m)。
以前は「マッキンリー」と呼ばれていたが、2015年から「デナリ」が正式名称となった。



トラッパークリークのキャンプ場で1泊。
北米の人口希薄地帯では、小さな街や村は「~クリーク」(意味は「小川」)と名付けられていることが多く、GS、モーテル、キャンプ場、レストラン、売店が一箇所にまとめられているサービスエリアとなっている。

キャンプ場はUS$20が相場。
13年前はWi-Fiなんてなかったが、今はキャンプ場全域でWi-Fiが拾える。

ニューテント。


いきなりチャックが壊れた。
高いだけの粗悪品を買ってしまったようだ。
金だけたっぷりふんだくってあらゆるものが粗悪、というのはつい最近まで西アフリカで体験してきたことでトラウマになっていたが、北米でもこんなことがあるのか。
全体的にちゃっちいつくりで、耐水性も怪しい。
これからガッツリキャンプ生活が始まるというのに。
これは買い直しだな。

自炊は、今後スープスパゲティより米の比率を増やしたい。
米を食べたい。
米に合うおかずを調理しやすいよう、アンカレッジでフライパンを買った。


シャワーを浴びようとしたら、コイン投入式で、なんと12分US$4。
4ドル分のコインを投入しないと稼働しないようになっている。
血も涙もねえ。
シャワーなんて3分で終わらせるから、1ドルでも稼働するようにしてくれ。
シャワーがこんなに高くつくととわかっていたら、キャンプ場はやめて野宿を選んでいた。



少しずつデナリが近づき、輪郭も色合いもはっきりしてきた。
天気の不安定なアラスカで、連日デナリを拝めるなんてラッキーだ。



ムース。


これもサイズ小さめ、角も小さい。
でも野生動物との遭遇はやはりドキドキするものだ。

デナリビューポイント。


ドライバーたちはこのビューポイントで止まって写真を撮るが、僕はここよりも見晴らしの良い場所をいくつも見つけて路上で眺められる、サイクリストの特権。





トラッパークリークの先は150kmの無補給地帯。
アップダウンもややきつく、2日の行程で。



野宿。


食料の管理には細心の注意を払う。

天気崩れた。


白夜においては昼夜の寒暖差はそれほどでもないが、晴天時と曇天時の寒暖差は激しい。
少し標高が上がったせいもあるが、日中10~12℃。

キャントウェルのキャンプ場。


「ようこそ人間たち」


片田舎のキャンプ場にも、アメリカンサイズの巨大キャンピングカーがずらりと並ぶ。




こんなモンスターを個人で所有できる経済力と土地の広さ、改めてすごい。
中はマンションの一室のよう、すべてがそろった家同等の生活空間となっている。



13年前は、どうしてキャンプ場にバスが停まっているのだろう、としばらく首をかしげていた。



北米では、一般にキャンピングカーは「RV」(Recreational Vehicle)と呼ばれる。
ご存知と思うが、「キャンピングカー」は和製英語なので通じない。
キャンプ場は「RV PARK」。

RV PARKはRV専用というわけではなく、テントサイトもある。


日本人のイメージだと、キャンプといったらテントだが、ここではキャンプといえば圧倒的大多数がRV、テントはごく少数。
退職後の老夫婦が巨大なRVでドライブしながらキャンプ生活を楽しむ。
日本では考えられないことだが、ここではふつうの老後のライフスタイルだ。

ちなみにここのキャンプ場はシャワーは無料だった。



天気は下り坂と思いきや、また晴れた。





気持ちいい。



写真は撮れなかったが、キツネやウサギが道路を横断するのを見た。

デナリ国立公園への拠点となる街。


また曇った。
ホテル、キャンプ場、スーパー、アウトドアショップ、レストラン、ギフトショップなどがここに集中している。

デナリ国立公園に向けてスーパーで食料を買い込んだが、まあ物価の高いこと。
タマネギ一玉US$2もする。
数日分の食料をまとめ買いしたら、目が飛び出すような額になる。

でもガマンできず、アイスを買ってしまった。


US$4.95。
ボリュームは日本で売ってるこの手のアイスの1.5倍以上はある。
奥までぎっしり詰め込んでくれている。

奇しくもリベリアのスーパーで買ったあのガッカリアイスとまったく同じ値段。


この街の裏の森の中に、WARMSHOWERS宅がある。


ホストのウィリアムは、この家でひとりで暮らしている。
いかにもアメリカンな人柄で、初対面なのにあたかも長年の友人であるかのように親しげに話してくれる。
容赦のない早口英語でも、波長の合う人とはスムーズに会話ができる。



初めての弓矢体験。


意外に簡単に命中させることができて楽しい。

夜、そろそろ眠たくなてきた頃、ウィリアムが「ピザ食べたいか?」と聞いてきた。
「いや、さっき晩飯食べたからお腹一杯だよ。」
「タダだぞ。」
「タダ!?」
「隣のピザ屋からいつもタダでもらってるんだ。」
「そういうことならぜひ!」
「Are you hungy?」
「Yes I'm hungry!」

彼はものの1分で焼き立てピザを持ってきてくれた。


「全部食べていいぞ。」

やったー!!!

晩飯食べた後にピザ1枚軽くたいらげた。
収縮していた僕の胃袋、ぼちぼち本来の容量に戻りつつあるようだ。

※西アフリカビザ情報追記
「コートジボワールビザ in ビサウ」の投稿で、ガーナビザを取得するにはコートジボワールの90日マルチビザが必要と書いたが、現在それが無効になってしまったとの情報。
コートジボワールのガーナ大使館でガーナビザを取得するには、原則としてコートジボワールに居住する者にしかその資格が認められない。
今までは、旅行者ならコートジボワールの90日マルチビザを提示すれば居住者と同等の効力を持つとされていたが、それが認可されなくなってしまった。
なのでガーナに行きたければ、その辺のコートジボワール人と仲良くなってその人の家に住んでいることにしてもらうか、あるいは国境に行ってアライバルビザを試みるか、それでもダメなら他の国のガーナ大使館に行って模索するしかない。
僕は途中で気が変わって西アフリカはコートジボワールで終わらせてしまったが、もし続行するつもりだったら大変なことになっていたことだろう。
結局断念してどのみちコートジボワールで終了になっていた気がしてならない。


Denali, Alaska, USA

22806km



3 件のコメント:

  1. テントはおそらく保証期間内ですから購入した系列の販売店と掛け合って新品、別品と交換してもらっては?

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    1. いや、たまたま不良品だったわけではなく、このテント自体ダメなやつです。
      同じやつは欲しくないし、別品と交換なんてできないでしょう。

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    2. あくまで日本でですが、差額払うからこれより高い品に交換して欲しいと交渉したら了承してもらったことはあります。
      でも同じメーカーでだったかもしれません。

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