2019年6月4日

コートジボワール

ダナネの先は、一応舗装道路だが損傷が多く、走りやすくはない。
そのうちシノワがきれいにしてくれることだろう。
勾配はきつくはないがフラットはほとんどなく、ひたすらアップダウンの繰り返し。
変わり映えのない風景、面白味のない風景、似たような農村。

まだ体が重く、ダルい。

コートジボワールの子供も、至近距離までは近づいてこない。
ちょっと僕を慕って追いかけてきたこの子たちも、僕の方から近づこうとして距離が3mほどになると表情がこわばる。



どんだけ怖がりなんだよ。

マンという街。


首都でもない地方都市なのに信号がある。


街を歩いていると、「シノワ! シノワ!」とうるさい。



「シノワ! シノワ!  ・・・ジャポネ!」
切り替えてんじゃねえよ。
たしかにジャポネだが、ふつうにハローとかボンジュールとかいうあいさつできないのかね。



セネガルでよく飲んだ紫色のジュース、ビサップがここでも売られている。


揚げ物屋さんで「写真撮らせて」とカメラを向けたら、「キャー!」と逃げていく。


しばらくキャーキャー笑っていたが、落ち着いて改めてもう1枚。


7500CFA(1389円)の宿で1泊。
コートジボワールではどこの街でも電気水道が24時間使えるようだ。
Wi-Fiはない。





この日も変わり映えのない風景、アップダウン、クラクション。
そしてまだダルい、パワーが出ない。

ドゥエクエという街で1泊。
生活水準は上がったが、食は逆に乏しくなった。
まともにちゃんと食べたい。
自炊しようにも、食材もろくに手に入らない。

街をさまよっていたら、ファーストフード店を発見。


2000CFA(379円)。
久々に人間らしい、いや失礼、まともな一食。
これも別に特徴のないチキンとポテトとサラダだが、モロッコや西サハラでよく食べた定番メニュー。
店主はアラブ人っぽく見えたので出身を聞いたらモーリタニア人だった。

今は胃袋が縮小しているので、この量でも満足。
この世に生を受けて以来、こんなにも低燃費な体質になったのは初めてだ。
でも元の自分に戻りたい。

翌日。
依然、体力回復せず。
アップダウン、何の感銘も受けない風景。

田舎道でも人の往来が絶えず、どこにいても常に見られ続ける。
休憩場所を見つけるのも一苦労。
5分、いや3分だけでいい、誰からも見られず木陰で座って休ませてほしい。

なんでそんなに見る?

いかん、イライラしてるな。
落ち着け。
ストレスをためすぎたら、それは自分に原因がある。

ダロアという街。
適当に入ってみたレストランがなんと中華だった。


オーナーは中国人だが料理をつくるのはコートジボワール人。

ショボっ。


これで6000CFA(1112円)とは、ずいぶんだね。
現在胃袋縮小中の僕でも、これはお子様サイズにしか見えなかった。

この日の深夜、発熱。
苦しくてなかなか眠れず。
風邪の症状はない。
頭痛もない。
腹も異常ない。
ただ発熱。
熱帯で発熱となると、まさかマラリア?

朝、とりあえず薬局に行うと思ったら、よりによって今日は日曜日。
病院も薬局も閉まってる。
仕方ない、ここにもう1泊して、明日薬局に行くか。

しかしその後、ベッドで横たわっていたら、症状はさらに悪化。
苦しい。
これはふつうじゃない、治療を必要とする病気だ。
病院はたくさんある、1軒ぐらい日曜日もやってるところがあるはずだと思って調べたら、あった。
フラフラの状態でレセプションまで言って事情を説明し、病院まで送ってもらった。

病院に着くと、僕は急患扱いですぐに診察してもらった。
熱を計ると、39℃。
こんな高熱初めてだ。
というか熱を出すこと自体、最後に熱を出したのが何十年前なのか記憶にないぐらいだ。

診断は、マラリア。

点滴を受けて数時間安静。


少し楽になった。

念のため、マラリアについて。
ハマダラカという蚊に寄生するマラリア原虫が人間の血液に侵入し、赤血球を破壊することで起きる病気。
他の病気と併発すると致死率が高まるので、発症したら24時間以内に治療を始める必要がある。
日曜だから病院やってない、じゃすまされない。
ワクチンはないので予防接種はできない。

医者も英語を話せないのでよくわからないが、なんとか理解を試みる。
まず体内のマラリア原虫を殺す注射を4セットもらった。
そして解熱剤、体温計ももらえた。
それから「君は疲れている」とビタミン剤をたくさんくれた。
たしかに、疲れてた。
たいした診察しなかったのによくわかったね。

総治療費は、3万2000CFA(5937円)。

点滴で少し楽になったとはいえ、まだキツイ。
宿に戻ってベッドに横たわると、もう起き上がれない。
震えるほどの寒気。
そうかと思うとその後熱くなって汗でぐっしょり濡れる。
その後また寒気。

一度ぐらいは風土病になってみたいものだとかバカなこと言ってた時もあったけど、やっぱろくなもんじゃないな。
西アフリカには蚊帳のある宿が多かったけど、日々蚊に刺されまくってた。
潜伏期間もあるし、どこでやられたかなんてわかりゃしない。

さて、問題は、出アフリカのフライトチケットをすでに買ってしまっていることだ。
それまでの短期間でこいつをなんとか治さなければならない。
ここダロアから首都アビジャンまで370km、バスで行く。

翌朝。
熱は38.5℃。
解熱剤が効いていてこの熱なのか、まったく効いていないのか。
平熱が37℃台の僕にとってこれは高熱といえるのか。
いずれにせよ、まだとてもしんどい。
自転車こぐどころか、荷物を運ぶことすらできない。
宿の人にお願いして、タクシーでバスターミナルまで送ってもらった。

UTBという大手バス会社で、アビジャン行きバスがある。
チケット1万6100CFA(2985円)、自転車2100CFA(389円)。

アフリカでよく見るぎゅうぎゅう詰めのハイエースなんて死んでも乗りたくないが、これは中国製の大型バス。
椅子は傾けることができず、足を伸ばすこともできず、快適とは言いがたいが、アフリカではこれが最上級。

9時出発。

僕は3連シートの通路側の席を確保した。
しかしよりによって、「男男男」。
他のシートを見ると「男子供女」とか「男女女」とバランスが取れているのに。
案の定、僕の隣の男も、その隣の男も、荷物をどっさり持ち込んで腕と足を広げ、僕の領土をグイグイ侵犯し、通路に押しやろうとする。
僕は必死に押し戻して自分の領土を奪還する。
男は身を引くが、しばらくすると僕の腕に自分の腕を乗っけてくる。
「ねえごめん、熱があって身体が痛いんだ、腕乗せるのやめてくれる?」
健常な時でも許されざる行為だ。
だから公共の乗り物って嫌だわ。
そしてたいていこういうヤツは車内で電話する。

車内にはテレビがあり、アホかと思うほど爆音でドコドコ系ミュージックビデオを流す。
健常時でも嫌なものだが、重病時はさらにこたえる。
運転手も他の乗客たちもマラリア患者が乗っていることを知っているが、いや他に赤ちゃんや老人も乗っているが、尋常でないノイズ耐性を持つアフリカ人は何ら気にもとめないのだろう。

そういえば、西アフリカでは音楽にも感銘を受けなかったな。
アフリカ東部や南部では、通りすがりの人の歌声を聞いただけでも、鳥肌が立つほど比類ない才能を感じたものだが。
西アフリカでは特に印象に残るものもなく、録音もしていない。

路面はやはり損傷が多く、スピードが上がらない。

憲性上の首都ヤムスクロ(事実上の首都はアビジャン)に着くと、隣の男が降りてくれて、ようやくゆったりできた。
ここからアビジャンまでは高速道路で、調子良く進む。

15時すぎぐらいにアビジャンに入ったが、中心地はやはり大渋滞で、終着ターミナルに着いたのは16時だった。
ターミナルから一番近い宿に投宿。
いやー、しんどかった。
が、なんとか乗り切った。

瀕死状態だったので後半まったく写真を撮ってません。
今日はだいぶ回復してブログ更新できるぐらいにはなりました。


Abidjan, Côte d'Ivoire



2 件のコメント:

  1. なんとマラリアとは!
    どこか遠くの国、他人事の病気だと思っていましたが現地では部外者扱いはされなかったですね。
    昏睡状態みたいな大事に至らなくてまずは安堵しました。
    まだ文明水準が高い国で治療ができたのも幸いでしたか。
    今までの旅で今回のような、これアカンわ状態になったのは急性腸炎、高山病、そしてマラリアの三回目でしょうか?
    西アフリカ以降色々とフラストレーションを感じる旅路のように思います。
    今回の罹患がすべてのアク抜けになればいいですね。
    バスの音楽をガンガン鳴らすのは眠気覚ましとも聞きました。

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    1. 当の僕も他人事のように思ってました。
      きっかけは蚊に刺されることですが、ギニア、シエラレオネ、リベリアのあの凝縮されたアフリカの最後の一撃として食らわされたような象徴的な一件です。
      たしかに、急性腸炎、高山病、に次いで3件目ですね。
      健常さが売りの自分もこう振り返ると日本でも網膜剥離になったりと、けっこう病気してますね。
      カーステレオのスピーカーって運転席だけに切り替えとかできるようにするべきですよね。
      僕の席のすぐ近くにもスピーカーがありました。


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