2019年11月28日

ロサンゼルス 1

ロサンゼルスも、キャンプ場なし、WARMSHOWERS全滅、モーテルは調べる気もない。
ホステルが集まる市街中心へと向かう。

予想に反して、自転車レーンが整備されている。
信号も、いちいち赤で引っかかることなくスムーズ。
坂もなく、快調に進む。

世界有数の大都市のイメージとは程遠く、しばらくは低い建物がのっぺりと続き、ふつうの街並み。
路上テントの多さ、ションベン臭さ、ガラス破片の散乱っぷり、などはラスベガスと変わりない。

日照時間の短さにもかかわらず、この日はがんばって132km走行。
LA Internationalに投宿。
ドミトリー1泊$18.24。
調べた限り、ここが最安。

Booking.comでは、税・手数料抜きの料金が表示されるので注意。
低価格な宿泊料金を表示しておいて、べらぼうな税・手数料を取る詐欺まがいの悪徳宿がいまだ多い。

ここは労働者の宿のようだ。
黒人、白人、中国人、国籍不詳、実に多種多様。
旅行者は、見たところいないわけではないが少ない。
好ポジションのベッドは長期滞在者に陣取られていて、残された空きベッドは荷物の置き場にも困る。
各ベッドにコンセントがあるのは良し。
Wi-Fiは不安定で、よく途切れる。
トイレ、洗面、シャワーはいずれも水の流れが悪い。

部屋で電話するバカ。
イヤホンせずに動画を見るアホ。
労働者の絶対法則が早くも炸裂。

日本人旅行者もふつうにBooking.comを利用しているはずだが、こういう底辺宿で日本人に出会ったことがない。
皆この辺は見極めているのだろうか。
でも明らかに旅行者が集まりそうな宿は軽く$30~40するので対象外だ。

ゆっくり休みたくて3泊予約したのに、こんなストレスフルな宿じゃ安らげない。
しかし、環境にすばやく適応するのが旅人の特技。
思考を切り替える。
ドミトリーは男女ミックスで、この男くせえ汚ねえ部屋にはひとりだけ女性がいる。
こういうたくましさを見せられると自分はなよっちいもんだと思い知らされる。

ハリウッドが映画の撮影地として選ばれたのは、晴天率の高さ。
1年のうち325日が晴天だという。
しかし僕が到着したとたん、天気ガタ崩れ。

これから向かう中南米に備えて自転車パーツを一新したいのだが、この天気じゃ動けない。
しかも、28日はサンクスギビングデー、29日はブラックフライデー、と祝日が続き、自転車屋も閉まってしまう可能性が高い。
観光するにも、街の規模がでかすぎて徒歩じゃどこにも行けない。
何もせず体を休めるには、雨天というのはいいかもしれない。
でも祝日ということは、ホステルの労働者たちもずっと部屋にいるのだろうか。

今日は雨だったが、一時の晴れ間に散歩。

宿。

一軒家タイプで、裏のパーキングに自転車を置ける。


よく、キューバではクラシックカーが走っていると聞くが、アメリカだってそこらで見かけるオンボロ車。








Los Angelesはスペイン語。
losは定冠詞で英語のtheと同じ、特に意味はない。
天使の複数形は英語だとangelsだが、スペイン語なのでよく見るとスペルが違う。
18世紀にスペインの探検隊がこの地に流れる川を「聖母ポルシウンクラの天使たちの女王」と名付け、後に「天使たち」だけが残されてこの地の名となった。
スペイン語の発音だとロスアンヘレス、表記は今もスペイン語だがアメリカ領となってからは英語の発音で呼ばれるようになった。



コロニアル風の古い街並みが残る。

なんたってここがアメリカ領となってから、まだ170年しかたっていない。
聞こえてくるのは英語よりもスペイン語、メキシカンミュージック、店に入るとスペイン語であいさつされたりもする。
宿の周辺はほぼメキシコといっていい。



メキシカンフードでも食べてみたいところだが、ついついチャイニーズへ。

$10。
値段ははるが、ボリュームは合格。
日本人がイメージする中華とはかけ離れているが、アメリカではこんなもん。



Los Angeles, California, USA



マリブビーチ

往復370km、ベイカーズフィールドに戻り、また同じホスト宅でお世話になった。

ロサンゼルスへ向かう。
気が重い。
今回のアメリカ大陸ルートで最大の都市になるだろうか。
どこの国でも大都市を走るのは大変。
自転車が排斥されるアメリカの大都市となるとなおさらだ。

まっすぐすんなり行けるルート(185km)は自動車専用の高速。


自転車で行くとなるとこんなにも遠回りさせられる(310km)。

しかも標高1500mの峠越えあり。

アホくさっ、やってられっかと投げ出したくなる。
でもこれがアメリカという国の現実なら仕方ない。
















山道スタート。


しかし広いな。


ここは天下のカリフォルニア、そしてかのロサンゼルスへ向かう道だが、さしたる街も何もない。

日没とほぼ同時に、うまいこと橋を見つけてもぐりこむ。

電波もなし。




すんごい強風(推定風速20m)だけど、よくやるなあ。
高所作業経験者ならわかる、風というものがどれだけの脅威となるか。




峠を越えて、長い下り。



強い追い風。


登りはそれほどでもなかったが下りは実に長い、しかも追い風、ガンガン下る。
このルートは、逆方向の方がはるかにしんどそうだ。


山を下り、街に出た。

キャンプ場なし。
WARMSHOWERS全滅。
モーテルは許容範囲を超える価格。
本格的に泊まるところがない。
やりづらいところだ。

森に忍び込む。

セコイアを見て、僕のアメリカ旅行は終わった気がした。
もう気分を高揚させるものはなく、クールダウンしていく。
アラスカからここまで半年間、物価高との格闘にほとほと疲れた。
ちょいちょい連泊はしたが、追われるようにしてせわしなく移動を続けてきた。
5ドルぐらいの安宿で1週間ぐらい何もせず沈没してみたいものだ。
でもメキシコもそこまで激安でもないんだろうな。



すんなりまっすぐ伸びる道はいずれ高速になるので、またバカみたいに遠回りしながら海へと向かう。

太平洋。


この海の向こうに母国が。



ここからロサンゼルスまでは一本道で行ける。


マリブビーチ。


Los Angeles, California, USA

33859km



2019年11月23日

セコイア国立公園



セコイア国立公園は南北にのびているが東西を突っ切る道路がなく(ハイカー専用トレイルならあるらしい)、基本的に西側からのアクセスとなる。
僕は東のデスバレーからやってきて、そのままセコイアに行けたらもっと早かったのだが、道路がないので南側から西側へグルっとまわりこんで来た。


アクセスがこんなに不便なのは、セコイアの東側には4000m級の高峰が連なっているからだ。
(アラスカを除く)アメリカ本土最高峰ホイットニー山(4418m)もこの山脈に位置している。



アメリカ最低地点と最高地点がこんなすぐ隣り合わせというのも面白い。
不毛な死の谷から一気に巨木の森へ駆け上がる、プレートテクトニクスが生み出した稀有なダイナミズム。


目的地は「シャーマン将軍の木」。
山道をひたすら登り続ける。
初日は雨予報だったこともあり、少しだけ進むことにした。

午後から雨。
久々の雨、しかもけっこうしっかり降る。

最初に現れたキャンプ場は、なんとフル。
ローシーズンで混んでるようには見えないのだが、全サイト予約済と書かれていた。
次に現れたキャンプ場は、閉鎖中。
もういい、ここに泊まる。
水道も止まっていてトイレも施錠されていたが、近くに川が流れていたので不便はなかった。
幸い、レンジャーが巡回に来た様子もなかった。

いつも夜は、ライトをつけているか、あるいはパソコンを見ている。
明かりに引き寄せられて、虫たちがテントに集まってくる。

これ何? 

翌朝。



デカイ。
そういえば、アメリカ本土でクマを見るのは初めて。
カナダで見たブラックベアよりデカイ気がする。
冬眠に備えているせいだろうか。



ちょっと進んだら、路上に子グマが。

セコイアはクマたくさんいるんだな。




長く険しい登り。
フラットも下りも一切なし、とにかく登り続ける。



地図を見ただけでも嫌になるエグさ。

ちょくちょく車が止まって声をかけてくれる。



 昨日の雨、山の上の方では雪だったようだ。



いよいよジャイアントフォレストへ。






標高2000m。


ミュージアムで休憩。
めざすシャーマン将軍の木は、世界最大の生物。
高さと面積においては他に譲っているが、体積と重量においてはこれが最大。
自由の女神より高く、スペースシャトルより重い。


高さは83.8m。
20階建てのビルに相当し、桜田門の警視庁が同じぐらいの高さ。
重さは1385トン。
プリウス1000台分に相当する。
クジラもゾウもこれに比べたら小さなものだ。

ちなみに世界一高い木は、同じくカリフォルニア州のレッドウッド国立公園にあり、115m。



また冬が来たみたい。
最近1年のサイクルが早いな。




埋めたら育つ?





ジャイアントセコイア。
巨木の世界。
物語っぽい。







到着。


シャーマン将軍の木。


予期していたが、写真に収まりきらない。

地球上で最大の生命体。
樹齢は推定2200年。
人類は自然を破壊し続けてきたが、一方で到底人智の及ばぬこの不変っぷり、不動っぷり。
触って感じてみたかったな。


すでに雪はやんでいるが、巨木の葉に乗った雪がいつまでも降り続ける。



有名な場所だが、人はちらほらといる程度で、騒がしい団体客はいなかった。


来た道を引き返した。
ブレーキを握りっぱなしで手が疲れる。
下りも楽ではない。


Tulare, California, USA

33425km