2018年3月28日

イルクーツク 4

同じルートを引き返してまたイルクーツクへ。
一度通った260kmの道、しかもけっこうなアップダウンもあり、なかなかダルい。

昨日の暴風は嘘のようにやみ、穏やかな陽気の中、のんびり引き返す。
夕方、そろそろ野宿の準備をと思い、売店でちょっとした買い物をしていたら、バスのドライバーに威勢よく声をかけられた。

「イルクーツク? 乗りな!」

バスといっても大型ではなく、日本のワンボックスよりも一回り大きい中型タイプ。
乗客はひとりもいない。
ほんのわずか悩んだが、条件が良すぎる、これはもう乗せてもらうしかない。

ドライバーはモンゴル系。
ロシア人だがまったくロシア人っぽくない。

カザフスタンやウズベキスタンでもそうだったが、必ずといっていいほど、
「キタイ(中国)?、コリア(韓国)?」
と聞かれる。
「イェポーニェ(日本)。」
と答えると、とても驚かれ、そして喜ばれる。

ドライバーは興奮して、
「イェポーニェ! ハラショー!」
「キタイ! ハラショー!」
「コリア! ハラショー!」
「タイワン! ハラショー!」

でも、
「ロシア! NO!」
と言う。

ロシアのことは好きじゃないらしい。
僕が「Why?」と聞いてもこれ以上の会話はできない。
世界中で見てきた、支配するものと支配されるものの対立関係がここでもあるのかな。

ドライバーはものすごいスピードでぶっ飛ばした。
何度も宙に浮いた。
あれよあれよという間にイルクーツクに到着。
わずか3時間。
はえー!

市の中心地で降ろしてもらい、そこから例の空港近くのホステルまで自転車で行き、夜8時にはもう部屋にいた。
ついさっき野宿の準備をしようとしていて、あと2日は走らなきゃな、だったのが信じられん。

イルクーツクでやることは特にないが、休憩がてら2泊。

雪はだいぶ溶けたが、まだ道路はグチャグチャ。

ロシアに入国して初めて、レストランに入った。

サムサ。


マンティ。


計235ルーブル(431円)。

どうも、ウズベキスタン系の店のようだ。
ロシア人とは違う、中央アジアの懐かしい感触。
よく見たら店の名前が「ブハラ」だった。

ウズベク語で「ラフマット(ありがとう)」と言ったらとても喜んでくれた。

スーパーでは、冷凍水餃子みたいなのがよく売っている。


具は肉だったり芋だったり。
これは簡単でいい。

ロシア料理を食べてみたいのだが、知らず知らずアジアンフードに寄ってしまう。

こんな大きな魚が49ルーブル(89円)ならお買い得。


バイカル湖の魚かな。

バイカル湖の旅を検討される方。
氷と雪の状況は年によっても日によっても変わります。
下記のリンクで衛星写真が毎日更新されているので、参考になると思います。

http://www.geol.irk.ru/dzz/bpt/ice/bpt_ksm.htm

画面左下の「jpg」をクリックすると最新の衛星写真が見れます。
青っぽくなっているところが氷で通行可能、白いところは雪で通行困難の可能性があります。


Irkutsk, Russia



バイカル湖 4

再び湖上探索。




こんなん渡れないでしょ、って思うでしょ。


渡れちゃうんです。




また水たまりで補給。


またオリホン島へ引き寄せられた。














雪が積もっているところは通れない。


厚さ1mの氷をすっかり信頼して安心しきってた時、とうとう見つけてしまった!


昨日もここを通ったが、こんな穴はなかった。
釣りで開けられた穴ではない。
気温上昇で自然に開いた穴だ。
こえ~。

湖面は日々豹変する。
昨日はツルツルだった表面に霜がのって、自転車走行できそうになっていた。


あー、気持ちいい。
わざわざ高額なスパイクタイヤを買わなくても、ノーマルタイヤでこの辺をしばらく走っていたらそれでもう満足。

いい気になって遊んでいたら、天候悪化してきた。




氷上にペグは刺さらないのでオリホン島の岸辺にテントを張った。
しかしみるみる強風になり、設営不可能となった。
周囲に風を防げそうな壁などない。

これは、本土に戻るしかない。
テントをたたんで歩き始めたが、ツルツルの湖面で強風に吹かれると踏んばることもできず、氷上を流されてしまう。

やべえ。

やむをえず引き返し、とりあえずオリホン島へ戻った。


なんぼ強風でも陸地ならまだ安心、未舗装道路を歩いて港まで行った。
40分ほどかけて港の待合所までたどり着き、最悪のピンチは逃れた。

さて、この待合所で野宿すべきか。
それとも、氷上を渡って2.6km先の本土まで戻るべきか。
天気予報によると、この後風はおさまる。

思い切って、日が暮れる前に氷上を歩いて本土に戻ることにした。

前半は調子良かったが、しかし、風はさらに強まり、暴風となった。
僕も自転車も、風に押され滑らされ踊らされ、なかなか進まない。

そして、ふと気づけば、信頼していた厚さ1mの氷が大きく口を開けている!


何がなんでもこれに飲み込まれてはならん。
なんたって世界最深。
少しでもグリップの効く雪の上を渡り歩いた。

その後本土に近づくと、車のタイヤ跡が現れたが、これもまた昨日とは様子が変わっており、ドロドロの雪道。
ズボズボと沈みこみながら、重い自転車を少しでも浮かせながら、ああ、本土までの道のりのなんて長いこと。

なんとかかんとか、無事帰還。


これも写真だとわかりにくいが、表面がかなり水浸しになっている。

わかりきったことだが、相手は自然。
わかりきったことだが、侮っちゃいかん。

出費がかさむことになったが、結局また同じ宿に連泊。
天気予報はまったくデタラメ、この後風はさらに猛威をふるい、窓に打ち付ける風音にゾッとした。


Irkutsk, Russia



バイカル湖 3

氷上歩行も慣れたもんで、もう恐怖もない。


でも時々、表面の上っ面がバリバリっと割れるとドキっとする。

気泡が上昇しながら凍ったかのよう。






電源は太陽。




巨大なドリルで穴を開けて釣りをする人たち。


これだけ密閉されても、湖の中の生物は問題なく生きていけるのか。
バイカルアザラシはどこでどうやって越冬するのだろう。

しばらく遊んでから、再び本土へ。


本土の港町のサヒュルタに、ちゃんと営業している売店があるとの情報を得たので行ってみる。


イルクーツクで出会ったモスクワからの旅行者が教えてくれたおかげで店を見つけられた。


何を買ったかって、もちろんコーラ。
野宿が続いた後のコーラはなんとも格別、これだけはやめられないよ。



風が強かったのでホテルに泊まることにした。
モスクワ旅行者お薦めの宿(おそらくサヒュルタで一番有名)に行ってみたが、レセプションのおばさんはロシア語以外一切受け付けず、いやロシア語の文面も見せたのだが、なんとも冷たく追い返されてしまった。

やはり今時は、Booking.comで予約してから行くべきだな。
スマホでどこでもネットできるわけだし。
でもBooking.comで調べても格安宿はなく、少し高めだが一番安い宿を予約してから行ってみた。

この子が案内してくれた。


宿も、Google Mapsなしで自力で見つけるのは至難の業だと思う。



ごくベーシックな英語を話せる夫婦で、とても親切に迎えてくれた。
もちろん部屋からはバイカル湖がバッチリ見えた。







特にロシア料理というわけではないと思うが、こんな感じのふつうの欧米風ディナーだった。



Irkutsk, Russia



2018年3月27日

バイカル湖 2

バイカル湖最大の島であり唯一の有人島であるオリホン島へ。


オリホン島は奄美大島ほどの面積、先住民のブリヤート人が住んでいる。
本土から直線距離でわずか2.6kmだが、氷の上を歩いて湖を横断なんて初めて、緊張する。



後ろを振り返ると、本土がもう遠くに。


GPSはちゃんと機能している。


もう少し。




上陸。


港には何軒かの店があるが、すべて閉まっている。
本土の方の港町も、観光地にもかかわらずゴーストタウンに近い様子だった。

島の中ほどにあるフジルという村が中心地で、店もあるとの情報。
そこまで行ってみるつもりだったが、予想以上の悪路で、全然進まない。
たかだか30kmほどだが、このペースだと丸一日かかる。
湖に遊びに来たのに、3日かけてここまでたどり着いたのに、さらに未舗装道路の格闘で時間を費やしたくはない。

眼下は美しい入江になっており、フジルとかいう村のことなどもうどうでもよくなり、吸い込まれるように再び湖へ。


ここは波が立たないせいか、実に滑らかな湖面。


なんだろう、この色。



ああ、この世のものとは思えない。



いつもそう。
自分の直感で、自分の足で、好きな場所を見つけることができれば、それでいいのだ。
フジル周辺の有名観光地等々はもう捨てる。



ここで氷上キャンプすることに決めた。


多少風が吹いている。
当然ペグなど刺さらないので、自転車と接続して、あとは荷物と自分の体重で、飛ばされることはないだろう。




所々に水たまりがあり、そこで水を汲む。


最高透明度の湖水は沸かさなくてもそのまま飲める。


今はこのスープスパゲティがどんなごちそうよりもうまい。


世のいかなる高級ホテルよりもぜいたくな1泊。


夜、風はやみ、すばらしい静寂と星空。

水たまりはたちまち凍ってしまうので、水汲みは日が出ているうちに。

ここでもちゃんとネット接続できて、湖上のテントの中から発信できた。
(キャンプ中はスマホから簡単に発信できるSNSのみ、ブログ更新は手間がかかるので宿にいる時のみにします。)

気温はさほど低くなかったが、さすがに氷の冷気が下から伝わってきて、夜中に何度か目がさめた。


Irkutsk, Russia



バイカル湖 1

ようやく見えた、バイカル湖!








やっと会えた。


淡水湖のボス、バイカル湖。

世界最古の古代湖。
もともとは海だったが、3000万年前に外洋から閉ざされ、長い年月をかけて淡水化した。
通常の湖は土砂の堆積で数万年で消失するが、バイカル湖はプレートの境で現在も引き裂かれているため、長期間湖であり続けている。

世界最深。
最大水深1642m。
スカイツリーが2.5本すっぽり沈む深さ。
石を落としたら湖底に到達するまでどれぐらい時間がかかるだろう?

世界最高透明度。
最大40m。

世界最大貯水量。
地球上の淡水(極地の氷などを除く)の20%を占める。

面積は世界7位、琵琶湖の46倍。

もともとは海だったため生物は独自の進化を遂げ、淡水でありながらアザラシ、チョウザメ、サケなど豊富な固有種を有する。

1~5月は厚さ1mの氷で覆われる。

世界遺産。

いざ、氷上へ。


車も通れるほどの厚さの氷だが、やはり最初は怖い。
おぼつかない足どりで、おそるおそる進む。
できるだけ車のタイヤ跡の上を。







これは、スパイクタイヤを履いてたとしてもまともに走れる気がしない。
でも何であれ、進むことができればいい。



未知の国で一歩を踏み出すのはいつだってビビるしゾクゾクする。
でもこうやってまた僕は進み続けることができる。




Irkutsk, Russia

375km



シベリア 1

水と食料をどっさり積んで、走行開始。
北東へ。

どこの国も、都市部は走りにくい。
しかも朝の通勤時間帯、しかも雪解けで道路ドロドロ。
ニューパーツできれいに新調した自転車が一瞬で泥まみれに。

でも都市部を抜ければ、一本道でシンプル、そしてドライ。


ようやくせいせい走れる。



日中は5℃ぐらい、上着を着ていると暑い。
風もなく穏やか。



小さな街や村が点在しており、補給はできると思うが、ロシアの店は看板もわかりにくいし店内もよく見えないしロシア語しか受け付けないので、まあ水と食料はあらかじめ積んでおいた方がいい。





バス停野宿。


ここは野宿にいいとは言えないが、誰からも見られない場所がなかなかない。
森の中はまだ雪が深く残っている。

ワンタッチテントは悪くない。
設営も片付けも楽。
ただ、ワンタッチの仕組みをつくるためのパーツで重量が増していること、価格も割り増しなところがデメリット。
耐久性と耐水性はまだわからないが、グランドシートの耐水性が怪しい気がする。
そして、大人2人用はやはり狭い。
荷物をすべて中に入れてシュラフをセットしたら、もう身動きがとれない。

ニューシュラフとニューマットは快適。
夜は-5℃ぐらいだったろうか、ぐっすりよく眠れた。



寒冷地では電子機器が正常に作動しなくなるが、この程度の寒さなら大丈夫。
ただ、スマホのバッテリーの減りが速いので、夜から早朝にかけては電源を落としておいた方がいい。



さらにシベリア感が増す風景。


写真ではわかりにくいが、左右と上の3ヶ所だけわずかに虹が見えた。




これも写真では伝わらないが、けっこうな勾配のアップダウンが続く。


2日目はレストエリアの東屋で野宿。
やはりドライバーから見られてしまうところだったが、何事もなかった。





シャーマンの塔。


チベットを思わせる。
ここはロシアでも南の端、アジアとまじりあっている。


Irkutsk, Russia



2018年3月20日

イルクーツク 3

僕が入国した翌日から気温急上昇。
日中は4~7℃まで上がり、汗ばんで上着を脱いでしまうほど。
街中の雪がみるみる溶けて、道路はドロドロ。










古めかしい木造の一軒家とは対照的な、現代の集合住宅。

滞在したホステル。

空港から目と鼻の先だが、こういう感じなので自力で見つけるには少し戸惑うかも。

客はほとんどロシア人。
それも旅行者ではなく仕事で来てるっぽい。
僕以外の外国人は見ていない。


ドミトリー1泊450ルーブル(827円)。

トイレに紙は流せない。
こういうのも久しぶり。


ここで、モスクワからのグループ旅行者(英語堪能)と出会い、貴重な情報をたくさん教わった。

必要な物資は市街でほぼ入手できた。
ガスカートリッジは、ODならスポーツ用品店で、CBならマーケットやスーパーで売っている。
スポーツ用品店や自転車屋なども非常にわかりにくく、事前に調べておかないと見つけるのは難しい。

唯一、スパイクタイヤだけはどうしても見つけられなかった。
おそらくイルクーツクには、自転車用スパイクタイヤを扱っている店はない。
これはもう仕方ない、諦めてなんとかするしかない。

明日から走行開始。
こういう緊張感も久々。
あードキドキする。


Irkutsk, Russia



2018年3月19日

イルクーツク 2









アンガラ川。




川幅の割に流れはとても速く、澄んでいる。


レーニン。






ドライブマナーは良い。
歩行者優先。
クラクションはあまり鳴らない。



英語は通じない。
ソ連時代からアメリカと対立して世界征服を企んできたのだから、英語など勉強するはずない。
でも一応観光都市なので、一部の人は英語を話せる。
看板などもほぼロシア語で、何の店なのか判別するのも難しい。





中央市場。






治安は良い。
もちろん警戒はしているが、犯罪の被害に遭いそうな予感はしない。

大半はスタイルが良くて美形のスラブ系白人だが、地理的にアジアと隣接しているので東洋系もよく見かける。
漢字やハングルで書かれた看板もよく見る。

東洋人はめずらしくないが僕は明らかに地元民と異なる風貌をしているので、だいぶよそ者感は出ていると思う。
でも外国人だからといってジロジロ見られるわけでもなく、からんでくることもなく、素っ気ないが、かといって決して不親切ではなく、中には笑顔で接してくれる人もいる。
全体的にもの静かで、淡々と日々を送っている人たち、という印象。





ウズベキスタンで僕の大好物だったサムサ(ヒツジのミートパイ)。


60ルーブル(110円)。
ウズベキスタンでは40円ぐらいだった。



スーパーはそこらにある。


スーパーで売られている商品は欧米とほぼ同じ感じ。
ただし、表記はすべてキリル文字。

物価は高くはない。
コーラ500mlが55ルーブル(101円)。



初めてSIMを買った。
MTS(キリル表記だとMTC)とかTele2といった通信会社が大手のようだ。


英語は通じないだろうと思って最低限のワードとジェスチャーで伝えたら、店員はふつうに英語を話せる人だった。

10GBでたった300ルーブル(551円)!

パスポートの提示が必要。
あとはスマホを手渡せば、SIMの挿入やアクティベートなどは店員がやってくれる。
いたって楽ちん、難しいことは何もない。

これでロシア全土どこにいてもインターネットに接続できる。
便利なもんだ。

電話もできるが、事情がない限り電話は使わない。
ただロシアでは、空港やショッピングモールでフリーWi-Fiが飛んでいるが、電話番号を入力しないと接続できない。
今後は電話番号もあるので、公共の場でのWi-Fi接続もできる。



Irkutsk, Russia



2018年3月17日

イルクーツク 1

到着。


成田からウラジオストク経由でイルクーツクへ。

最初のアエロフロート航空(オーロラ航空)は、荷物の超過料金はなんとゼロですんだ。
重量を減らすため、インナーから防寒着まで着込んでチェックインに臨んだ甲斐があった。
飛行機はセスナかと思うほど小型で、座席もとても狭かった。

ウラジオストクに到着した時点で、ロシアへの入国審査。
質疑もなくスムーズにスタンプが押された。

空港のATMでロシアルーブルを引き出せた。
前回の旅まではシティバンクのカードを使っていたが、なにかと割高だし、今は複数の銀行が国際キャッシュカードを発行しているので、シティバンクは解約して今回は別社の口座をつくった。
実際に海外で現地通貨が引き出せるかどうかはやってみないことにはわからないのでいつも緊張するのだが、問題なかった。
ちなみに、日本の両替屋でも円からルーブルに替えることができるが、レートが非常に悪いのでやめておいた方がいい。

次のS7航空では超過料金4000ルーブル(7371円)取られた。
過去の超過料金に比べたらタダみたいなもんだ。

22:45、イルクーツク空港に到着。
自転車も荷物も手荒に扱われた形跡はなく、無事だった。
いつものことながら、注目されながら自転車を組み立てた。

深夜の到着だったので、初めて宿の予約というものをした。
空港からなんと徒歩3分のホステル。
レセプションは24時間、英語が通じる。

とりあえずスタートは万事うまくいって、一安心。

成田で、母と。



Irkutsk, Russia