2018年5月21日

マシュハド 1

マシュハドでは安宿の選択肢があまりなく、長期旅行者はここに集まる。


ドミトリー1泊US$10。
リアルで支払うと1泊62万リアル(1634円)と非常に割高。





オーナーのバリじいさんはとてもわかりやすい英語を話し、いつも礼儀正しく丁寧に客をもてなしてくれる紳士だ。
ホテルでもなくホステルでもなく、「HOMESTAY」と名付けているところにも彼の人柄が表れている。
実際ここは彼の家で、奥さんと娘さんもここで生活している。

ビザ情報に精通していて、相談すれば丁寧にアドバイスしてくれる。
しかもトルクメニスタン大使館まで750mという好立地。

僕のアライバルビザは延長できるだろうかと聞いてみたら、「その時はペルシャ語でレターを書いてあげよう」と言ってくれて、頼もしい人だ。

また日本人びいきで、あいさつ程度の日本語を話せる。
ドイツ語とフランス語も話せる。





テヘランで出会い、イスファハーンで再会した香港人のロンと、またもや再会した。
マシュハドに到着する日時も宿もお互い知らせていなかったのに、まったく同じ日に同じ宿でバッタリ。

マシュハド唯一の見どころである聖地イマーム・レザー廟に行こうと誘われた。
僕は気が進まなかったが(だって短パンだから)、一緒に行くことにした。



入口のゲートで警備員が立っていた時点で僕は帰りたくなった。
ここはムスリムが巡礼に来る聖地であり、外国人はまずゲートで止められる。
短パンをズリ下げて、スネが少しでも隠れるようにした。
ふつうのモスクでも入らないように自粛しているのに、こんな由緒ある聖地に短パンで来てしまって本当に申し訳ない。

ちなみにトルクメニスタン大使館に行った時は、上下とも長袖のインナーを着ていった。
でも大使館員は僕の服装などまったく気にしていない様子だった。

いろいろ質問された後、英語を話せる人が来て、その人についていくという条件で入場が許可された。
非ムスリムは立入禁止というわけではなく、ガイド付きのちょっとした見学ツアーという形で歓迎されるようだ。

カメラやライターその他危険物の持ち込みは禁止。
スマホの持ち込みは可、ガイドが許可した時のみスマホでの撮影可。
敷地は広大で美しく、制限がなければ皆撮りまくると思う。





流暢な英語を話すここの聖職者たちも、日本人だと答えただけで目を輝かせる。
日本のヒーターはグレートだ、車もグレートだ、ハヤオ・ミヤザキもグレートだ、と。
僕自身は何もしていないのに絶賛されまくって変な気分になる。



通りすがりの巡礼者のおじさんから「ニホンジン?」と声をかけられた。
80~90年代に日本に15年住んでいたという、流暢な日本語を話す人だった。
「オレの日本語はどうだ? まだ忘れないよ。」
「こっちの人は日本人じゃないが、あんたは日本人だなって、見てわかったよ。」
「オレは毎晩トルコのビール飲んでるけど、アサヒスーパードライが恋しいよ。」
「東京じゃよく六本木に行ってナンパしたぜ。」
などなど、隣に奥さんいたのだが日本語わからないのをいいことに、ぶっちゃけてくれた。
「テヘランの空港近くに住んでるんだ。テヘランに来たらウチに泊まりに来な。」
と言ってくれた。
こんな人の家に泊まれたら楽しそうだが、残念。
「歳はいくつだ? なんで結婚しない? ひとりはよくないよ。イランの女はどうだ? 結婚しなよ。」
と、くどくど言いながら去っていった。

翌日。
ラマダンが始まった。
この日になって初めて知って、愕然とした。

パキスタン以来、僕にとって2度目のラマダン。
ラマダンとは、イスラム暦(太陰暦)の毎年9月に1ヶ月間おこなわれる断食。
日中は飲食禁止、喫煙や性行為も禁止。
日没後は解禁。

イスラム教徒は世界で16億人いるといわれている。
世界の人口の5人に1人が現在断食中ということである。
ただし、幼児、妊婦、病人、旅行者にはその義務はない。

ビザ待ちでしばらくここに滞在しなければならないというのに、ラマダンか。
日中はレストランはすべて閉まっている。
スーパーで食料を買うことはできるが、旅行者でも外でおおっぴらに飲食するのはよろしくないので、宿でこっそりと食べる。

幸い、ケーキ屋が開いていた。


宿では、トルクメニスタンから来た日本人も何人かいて、情報交換できた。

サイクリストもいた。
ロンドンから日本へ向かうアイルランド人。


キャンピングカーで旅しているスイス人一家。


こんな小さな子供2人も連れて、これからトルクメニスタンに行くという。
子供が生まれる前は車でアフリカ一周したこともあるという、たくましい夫婦。

オーダーすれば、US$5でディナーをつくってくれる。

これは独特のねっとり感ですごくおいしい。




いや、すごくうまい。
レストランのメニューにはこんなものない、まるで別物じゃないか。
こんなにガツガツモリモリむさぼったのはイランでは初めてかもしれない。



バリと娘さん。


昼はケーキ屋に行くのが日課になった。


宿の近くにアウトドアショップが何軒かあり、OD缶を買った。
カセットコンロはバリに譲った。
とても喜んでくれて、ライスプディングをつくってくれたり、ディナーを無料にしてくれたりした。
律儀な人だ。



ケーキに飽きたらフルーツ。


僕はここのディナーがすっかり好きになり、毎晩オーダーするようになった。



白いのはヤギのミルクでつくったヨーグルト。



ノンアルコールビールというものを初めて飲んだ。
ふつうのビールとの違いは僕にはわからない。

ネバネバした食感のものが多いというのは興味深い。
我々日本人もネバネバ大好きだ。



バリは他の旅行者に言う。
「多すぎて残してしまっても気にしないで。リョウが全部食べてくれるから、ハハハ。」

旅を始めて3ヶ月。
推定で体重10kgぐらいは落ちた。
お腹ぺったんこ。
こんなすばらしい家庭料理出されたらそりゃスイッチ入りますよ。

また失敗してしまった。
リアルがだいぶ余ってしまった。
宿代もリアルで払い、買い物もたくさんしたけど、それでも余る。
思ってた以上にイランでは金を使わなかった。
イランでトルクメニスタンの通貨マナトは入手できないそうなので、ドルに戻すしかない。
ドルからリアルに両替するのは歓迎されるが、この不安定で貧弱な通貨リアルをドルに両替するのは非常にレートが悪い。
けっこうな大損になりそうだ。
つくづく僕はお金のやりくりがヘタだ。

明日、トルクメニスタン大使館に行ってみる。
通常は受け取りは16時だが、今は忙しくないので12時に受け取れる、と今日去っていったイギリス人が言っていた。
僕もうまくもらえれば、明日の昼には出発する。


Mashhad, Iran



2 件のコメント:

  1. 意志の弱い僕ならいわゆる沈没してしまいそうです。
    イランとスリランカは人の温かさが特に感じられた国でした。
    いいなー、イラン。
    もう一度行きたいです。
    亮さんの場合不明確なのかも知れませんが、ビザ延長してもう少し長居して欲しいです。

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    1. とにかく人がいいですね。
      でもひとつの場所で時間をつぶすのはなかなか苦です。
      特にオーバーランダーは、次の国へ次の国へという思いがこみ上がってきますから。

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