2019年12月3日

オーシャンロード

こういう行為は周囲の人を不快にさせる、という想像力の欠如した労働者たちの宿はやはり落ち着けなかった。
アメリカで$18の宿となるとここまで堕ちるということがわかった。

朝、出発する時に知人から連絡が入った。
「あなた今LAにいるの? 私の友達が住んでるから泊めてもらえるかもよ。」
なんだかいろいろうまくいかない時ってあるもんだな。

ロサンゼルスの大都市圏を出るまで50kmほど走らなければならなかった。
その間、街はどこまでも汚く、ゴミが散乱し、路面は荒れ、浮浪者たちがうごめいていた。

カリフォルニアは、この一州だけでGDPはイタリアの一国に匹敵し、世界のトップ10に入るほどだという。
シリコンバレーやらハリウッドセレブやらが莫大な富を生み出しているのだろう。
おまけに資源まであるのだから、豊かでないわけがない。
裕福で物価の高い国は今までも旅してきたが、こんなにもゴミと浮浪者であふれている先進国は他にない。
浮浪者はほとんど黒人。

アメリカは白人が開拓して支配層となり、超大国となって君臨してきた。
概して白人は、裕福で親切で礼儀正しく教養もあり、接していて気持ちがいい。
しかし、先住民を駆逐してきたこと、メキシコの領土をぶんどったこと、黒人を奴隷として使ってきたこと、そういった歴史が生み出した歪みは今も解消されていない。

カリフォルニアのIT産業やエンターテイメントには世界中が恩恵を受けてきたが、まずカリフォルニアは自分のところのインフラぐらい整えたらどうだろうか?
あふれた無職の人たちに道路のメンテナンスとか、仕事を与えることはいくらでもできそうだけどな。
街の清掃とかはどうなんだろう、どうすることもできないまま時は流れていくのだろうか。

爆弾低気圧の後、山々は白く染まっていた。


しばらくビーチリゾートが続く。
もう浮浪者はおらず、海に面して豪邸が並ぶ。
イメージ通りのアメリカのウエストコースト。

都市圏を出たのに、信号の多さに辟易する。
信号はすべて赤。
すべての信号は僕が近づくと青から赤に変わるように仕組まれている。

オーシャンロードにはウォルマートがなく、高級スーパーしかない。
オーガニックだかなんだか知らないが、ミニサイズでバカ高いものばかり、僕がいつも買っている安コーラ安ソーセージがない。

アメリカ滞在もあとわずかだというのに、日に日にやりづらさが増していく。


ここのところのWARMSHOWERSの返信率の低さには失望の念を禁じえない。
WARMSHOWERSには多大な恩を受けてきたので、少々うまくいかないことがあっても気にしないようにしているが、送ったリクエストがことごとく無視され続けると、さすがに心がすさんでくる。
断られるのは仕方ないけど、返信ぐらいするのが人として最低限の礼儀だと思うのだが。
たまに返信が来ても、「今そこの街にはいない」という内容ばかり。

サンクレメンテという街。
ホステルなんと$45。
ドミトリーでこの額は過去最高。
サーファーの集まる宿なので客のマナーは悪くないが、部屋は狭くて荷物の置き場もなく、設備やサービスはいたって質素。

この物価高にも感覚が鈍ってきて、もういいよ払えばいいんだろという感じだが、物価の安い国で$45といったらどれだけゴージャスな星付きホテルに泊まれることだろう。
アメリカはここまでハイプライス&ロークオリティな国だったか。

久々に自炊写真。

感謝祭ということで、ターキーと野菜数種。
クソ高級スーパーでもなんとかして安い食材を集めた。
吉野家の牛丼の半額ぐらいで、吉野家よりはるかに格上の味とボリュームのメシをつくれる。
さりげなく乗っている紅生姜は、吉野家でもらったもの。

翌日。

オーシャンロードのメリットは、サイクリスト人口が多いため自転車レーンが整備されていることだ。
日曜日ということもあり、数多くのロードレーサーとすれ違う。
声をかけてくれる人も多い。

中華系のグループに声をかけられた。
なんだか僕にすごく興味を持ってくれて、しばらく話をし、道案内もしてくれた。
片言の日本語を話せる人もいた。


ここまで自転車道だったのに、ここから先はしばらく高速に乗る。
僕ひとりだったら絶対躊躇していたと思うが、かれらが言うにはこの区間は高速も走行可能でいつも走っているし他に道もないとか。
僕が恐れているのは、合法なのか違法なのかはっきりしないまま走り、警察に捕まったりクラクションを鳴らされたりすることなので、これだけの集団で一緒に走っていれば何の不安もない。
でも結局最後までわからなかったな、走っていいのかダメなのかの判断。

ちょっとすさんでいる時でも、何もかも悪いことばかりなんてことはない。
いい人たちに出会えた。






殺す気満々の松ぼっくり。

重いしゴツゴツだし、手で持っただけでもちょっと痛いぐらい。


San Diego, California, USA

34133km



2 件のコメント:

  1. 西アフリカ以降対価と質が不釣り合いで経済的に悩まされる旅が続きますね。
    走り疲れて宿を取るのに法外な値段を言われるとガックリします。
    今のところR3で最も心穏やかに走行できたのは中央アジアでしょうか。
    結局simカードはほとんど使い物にならなかったのですか?

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    1. 物価で言ったら、ロシアからモロッコにかけてはストレスなくうまくいけました。
      ヨーロッパもスイスとか北欧に行ったら別世界ですが、今回のルートだと低出費で済みました。
      広大な北米で半年間も高出費が続くとへこみます。
      SIMは法外な額を払わせておいてカバー領域が狭くチンケなサービスなので強めに愚痴ってますが、まったく使い物にならないのなら最初の1ヶ月で使用をやめてます。
      渋々ながらもやっぱりないと困るので払い続けてました。

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