2019年7月25日

アラスカハイウェイ 4

ユーコン最後の街ワトソンレイクもまた、ゆっくりのんびりすごせるようなところではなかった。

キャンプ代がC$10(823円)と安くすんだのは助かった。
ただし、シャワーはコイン式で5分につきC$1(82円)。
Wi-Fiなし。

すぐ目の前にあるビジターセンターでネットにつなげられる。
中にコンセントとUSBポート付きのカウンターがあり、ラップトップ広げてしばらく居座っても文句言われることはない。
でも節度というものがあるので、最低限の作業と調べ物だけ済ませて撤収。
本当は寝そべってダラ~っとネットやりたい。

スーパーはあるが、やはり恐ろしく物価高い。
数日分の食料と日用品を買い込んだらC$100(8234円)近く使ってしまった。

ジェリービーンズは僕にとって仙豆のようなもの。


走行中やキャンプ中の耐え難い空腹時も、これを頬張っていれば活力がみなぎる。
818gでC$7.99(657円)、これは高くても買う。

ガスがない。
カナダの店はアラスカほどアウトドア用品が充実しておらず、OD缶が売っていない。
ホワイトホースのアウトドアショップで買っておいたのだが、近頃ガスの消耗が激しくて(米を炊いているからだと思う)、頻繁に買い足さないともたない。
ワトソンレイクで買えると思っていたのだが、誤算だった。

連泊せずに走行。
ダルいアップダウンが続く。

ブリティッシュコロンビア州に入った。
かつてアメリカにもまたがっていたコロンビア地区に由来し、アメリカ領と区別するためイギリス領のコロンビア地区という意味で「ブリティッシュコロンビア」と名付けられた。
日本の2.5倍の面積、人口500万人。
ユーコンとは桁違いの人口だが、その大部分はアメリカとの国境に近い南部に集中している。

この先アラスカハイウェイは、さらにサービスが乏しくなっていく。
Iron Creekは閉業。
Contact Creekは営業しているがキャンプ場なし。
キャンプはできないのかと聞いたら、敷地内にテントを張ることを許可してくれた。

翌日は雨。
本格的に多雨地帯に入ったようだ。
西ヨーロッパと同じぐらい、この界隈のカナダ山岳地帯は毎日雨。
日本の梅雨なんかかわいく思えてくるぐらい、とにかくよく降る。
ただ、西ヨーロッパは路面上に細かい砂利が多く、雨天走行後は砂利まみれになって掃除が大変で自転車パーツの消耗も激しかったが、こっちはそうでもない。

バイソンの大群に遭遇!


意外に警戒心が強いようで、200mほど近づいただけで早速逃走モードに。
野生動物は、車が近づいても逃げないが自転車が近づくとすぐ逃げてしまう。
かれらの目には僕はクマに見えているのかもしれない。



1頭が走り出すと他も続き、大群全体が疾走。
雨の中、カメラを持ちながら僕も走る。
僕から逃げたければ森の中へ入ればいいのに、ひたすら道路に沿って走る。
この辺は長く緩やかな下りだったので、追いつくことができた。



すごいタフだな。
この巨体で、20km/h以上でしばらく走り続けた。


最後尾の数頭はバテてきたようだ。
でも僕に抜かれてもまだ走り続ける。


やがて止まった。


アメリカバイソン。
北米に生息する野生牛で、大きいものは体重1tを超す。
現地ではバッファローと呼ばれることも多いが、バッファローはアジアやアフリカに生息する水牛で、角はバイソンより長く、体毛は薄い。
おそらく、北米の人はバッファローという言葉を野生牛を指すものと解釈し、現地の野生牛であるバイソンをそう呼ぶようになったのだろう。

その後、ブラックベアを目撃したが距離が遠すぎていい写真は撮れなかった。


バイソンに比べて迫力に欠けるな。

クマは人間を襲うものだと思われがちだが、クマは「通常は」人間を襲わない。
少なくとも道路上で遭遇した場合、僕がクマに気づくより先にクマは僕の存在に気づいている。
クマも含めてたいていの野生動物は、こちらから近づくと嫌がって逃げるものだ。
クマが人間を襲うのは、そうでないパターンの時。
たとえばクマも気づかぬうちに不意に近距離で遭遇してしまった時、あるいは軽率な好奇心で接近しすぎてしまった時、また子グマに近づいたら母グマに襲われるのは言うまでもない。
野生動物にはそれぞれ、「これ以上近づいたらダメ」というゾーンがあるのだろう。
近距離でクマと遭遇してしまった場合、背中を見せて逃げてはいけない。
捕食動物というのは逃げようとするものを追う習性があるからだ。
前を見たまま、大声を出したり腕を上げたりして自分を強く大きく見せて、少しずつ後ずさりして距離をとるのがいい、と言われている。

Coal River。


僕はここCoal Riverのサービスステーションをよくおぼえている。
13年前、ここで働くブライアンという男と楽しい時間をすごした。
彼はここに住みついているようだったし、13年という月日を経て再会できたらおもしろいなと思っていた。
でも残念ながら、彼はもうここにはいなかった。

ここはもうだいぶ古びており、とてもきれいとは言えない。
水道水は濁っていて変な味がする。
Wi-Fiもない。
にもかかわらず、キャンプ代はC$22.50(1852円)と割高。

この界隈のサービスステーションは、電気が通っていないのか、あるいは十分な電力が供給されていないのか、ジェネレーターで発電している。
さすがにアフリカと違って時間制限はなく24時間使えるが、一日中ジェネレーターのエンジン音が鳴り止まない。

ガス節約のため、焚き火。


今まで、誰かと一緒にいる時に余興として焚き火することはあったが、自炊目的でひとりで火を起こしたことは一度もなかった。
やってみると、楽しい。



むしろなぜ今までやってこなかったのか。
こういう釜戸と薪が用意されているキャンプ場は多い。
せっかくこんないいものがあるわけだし、節約しない手はない。

完成!


最高。
多分味はいつもと同じなんだろうけど、気分的においしい。



2頭のバイソンと遭遇。
僕から逃げることなく、黙々と歩き続ける。







草を食べるわけでもなく、車や僕のことも意に介せず、ただただ歩く2頭。
一体どこへ向かっているのか。





何だろう。
現代に生きる草食哺乳類のはずなのに、太古から生きているかのような「恐竜感」。
この異形に呆然と見とれてしまう。







「野生」に近づき触れてみたいという軽率な好奇心。
一瞬、「これ以上近づいたら殺すよ」というサインをこの草食動物は僕に向けた。
襲いかかるグリズリーを返り討ちにして殺してしまうこともあるというバイソン。
怖かった、接近しすぎてごめんね。

間近で見たバイソン、無数の蚊につきまとわれていた。
かゆくないのかな。

しばらくして、また2頭のバイソン。
口はどこにある?




こっち見てる。


やはり車には無関心、僕の方を警戒している。



不安定な天候。


この後、激しい雷雨。
雹。

衣類やバッグは防水仕様になっているが、あまりに激しく長く降られると、少しずつ浸水してくる。
アンカレッジで買ったトレッキングシューズはまあまあの耐水性だが、この雨で完全に浸水してしまった。

Muncho Lakeで1泊。
最初に現れたMuncho Lake RV Parkは閉業。
ここに泊まるつもりだったのに。
数km南にあるNorthern Rockies Lodgeに行ってみたら、テントサイトでC$45(3705円)という聞いたことのない額を言われ却下。
すぐ近くの公営キャンプ場に行ってみたら、RVで埋め尽くされており、テント張れず。
公営キャンプ場の井戸で水を汲み(茶色く濁っていたが味は問題なかった)、湖で水浴びして、すぐ近くの荒野で野宿することにした。



この夜、また激しい雷雨。
テント浸水。
雑巾で拭き取って絞って、を繰り返した。


Toad River, BC, Canada

25352km



2 件のコメント:

  1. 毎日?大きいめの動物に遭遇してますね。
    バイソン、よく見れば猫背な牛ですね。
    群れになって走ると地鳴りはするのでしょうか?
    僕が奈良公園の鹿に無関心なように、おそらく地元の人は日常の風景で特に気に留めていないと思います。
    先日の狼しかり目があうのは相手は「珍しくジロジロ見る此奴何者?」と思っているのでしょうか。
    犬、目でくれくれアピールしてますが。
    炭酸飲料を始め甘いものが力の根源ですが、今まで旅先で虫歯になったことはないのですか?

    返信削除
    返信
    1. 地元民も動物の話が大好きでよくエキサイトしますし、個人宅や店内にも動物の写真などがよく飾られています。
      自分たちは野生の王国で暮らしている、という意識を強く持っているのだと思います。
      むしろ旅行者の方が、「ブラックベアならもう見飽きたわ」と、何度か見て写真に収めればそれで満足といった感じです。

      虫歯ですが、日本で生活している時は金銭的な節約はしますが糖分を控える理由はないので毎日炭酸を飲たんだり糖分をたっぷり摂ってます。
      旅行中は、特にアラスカカナダのような補給が困難なところでは水を飲まざるを得ないことが多く、虫歯になる可能性は低くなると思います。
      ただ、毎度毎度旅に出ると差し歯や詰め物が取れたりするのが困ります。
      今回も出発して数ヶ月で詰め物が2ヶ所取れてしまい、隙間ができちゃってます。

      削除