このあたりから、SIMでもまったくネット接続できなくなった。
これは何?
墓場か、それともイスラムではない土着宗教の祭壇か?
ランガーという村の先はしばらく無人地帯。
この村に新しくできた宿があった。
Wi-Fiこそないが、水洗トイレ、ホットシャワー、1階がミニショップになっており、なかなかの品ぞろえ。
翌朝、雨。
10時ぐらいにはやんだが、元ガラス屋の習性で、朝の時点で雨天だとその後晴れてももう仕事する気にはなれない。
というわけで連泊。
ヒマそうにしている僕を見て、裏山トレッキングはどうかと提案してきた。
その辺にいた子供2人にガイドさせて、1人10ソモニ(119円)の報酬ということで。
墓場は墓場でちゃんとある。
ランガーの村を一望。
片道30分弱。
目的地に着いて一休みしていた時、少年のひとりが「1人20ソモニ!」と言ってきた。
「ダメ! なんで値上げする理由があるんだよ!」
まったく、この歳で金にガメツイのは問題だな。
最初の約束通り1人10ソモニということで納得させたが、帰り道の途中でも「マニー、マニー」と言ってきた。
ダメ、最後まで仕事をまっとうするまでは払わないよ。
どういう教育を受けているのか知らないが、金、金、金としつこく言われると気分を害する、お互い気持ちよくなれるようにしようぜと教えたかった。
翌日。
ランガーの村を出発した直後、険しい登りが始まるのだが、気付いたら子供2人が僕の自転車を押していた。
うん、もうわかる。
金が欲しいのね。
「手伝わなくていいよ、バイバイ。」
と言ってもしつこく押してくる。
僕は一度断った。
ここから先はかれらが勝手にやってるボランティアのようなもの。
しばらく放置したが、あまりにしつこいので「もうあっち行けよ。」と追い払った。
そしたら案の定、「マニー、マニー。」
これで払ってしまう外国人がきっといるんだね。
アフリカを旅していた時と同じ堂々巡りが頭の中でリプレイされた。
交通量は激減。
地元の人でもこの先は用がないのだろう。
でも1台の車が僕をジロジロ見ながら並走してきた。
「この先は村がないぞ。」
「知ってる。」
「乗ってくか?」
「いやいい。」
「自転車でなんてムリだぞ。」
「・・・」
「200ソモニでどうだ?」
「うるせえ。」
その後は静寂。
やっとひとりになれた。
幸い、他のサイクリストともタイミングをずらすことができた。
無心になって没頭しよう。
と思っていた矢先。
車が僕の横で停まった。
ホログで出会ったアメリカ人のティナだった。
彼女とはやけに仲良くなってしまった。
僕の半分ほどの歳だが、経験値高く、行動力あり、面白い子だ。
やっとひとりになれたと思っていた直後だったが、再会できてうれしかったし彼女も喜んでくれていた。
食料はある程度積んでいるが、問題は水。
でも心配無用、山から良質な水が無限に流れてくる。
無人地帯のはずが、いきなりおっさん出現。
あそこに住んでるの?
ひしめき合う家畜と、数人の人が見える。
なかなかすさまじいな。
家畜と水さえあれば生きていけるということか。
これもう半分独立国家でしょ。
でもまあ、あの家の上流で水を汲んでおいてよかった。
アフガニスタン、近ッ。
川幅10mもない。
ロープ投げれば物資を運搬できそうだ。
今度こそ、道路からも誰からも見られない死角にキャンプ。
対岸のアフガニスタンはよく見える。
マーモットがたくさんいるようで、僕がテントから出るとけたたましく鳴いて逃げていくのが見えた。
Sary Tash, Kyrgyz