引き続きアフガニスタンとの国境をなす川沿いに進むが、ホログの先は一般にワハーン回廊と呼ばれる。
「回廊」という聞き慣れない言葉だが、英語だと「corridor=廊下」。
山がちな地形の中で唯一通行が可能なルート、それも曲がりくねった通り道という意味合いだと思う。
厳密にはアフガニスタン側のエリアをワハーン回廊と呼ぶのかもしれないが、ここでは便宜上この辺一帯をひっくるめてそう呼ぶことにする。
村は数kmおきに現れるが、店やレストランは一段と乏しくなった。
レストランが現れると、例のごとく子供たちが駆け寄ってきて強引に引きずり込まれる。
メニューなんてないので、とりあえず何か食べたいとジェスチャーすれば伝わる。
パン、ヨーグルト、ソーセージ、チャイ。
野菜は皆無。
ヨーグルトはやけにリアルで、すごく酸っぱくて、どこか臭い。
冷蔵庫なんかないだろうから、常温保存か。
お腹弱い人は一発でやられるかも。
常に人目があるので、キャンプに適した場所がなかなか見つからない。
別に見られてもいいか。
村人のおばちゃんたちに、ここで寝てもいいかとジェスチャーで聞いてみたら皆さん「どうぞどうぞ」と、大丈夫そうだ。
夕食も終えて、日も暮れ始め、そろそろ寝支度かという頃、人が近づいてくる気配がした。
「グッドモーニング!」
うわぁ、これは嫌な予感。
軍人だろうか、イカツイ体型の二人組。
英語はまったく話せないが、どうやらここは軍事エリアで、対岸でタリバンが見ているからキャンプはダメだ、ということはわかった。
一度セットしたテントとシュラフを片付けて別の場所に移動するというのがいかに面倒くさいことか。
でも駄々をこねてもダメなものはダメっぽいので、渋々片付け、かれらに案内されるがまま、1kmほど離れた果樹園にテントを張った。
結局ここも、対岸から見えてるじゃねえか。
でも今回はタリバン云々ではなく、人目につく場所にテントを張ってしまった僕のミス。
特にタジキスタン人は、僕が何をしていようと何かしら言いたがる人たちなのだ。
川のすぐ近くに道をつくってくれたらムダにアップダウンしなくてすむのにな。
砂ァ。
このおじさん何して遊んでくれるんだろ、といった目で無言で僕を見つめ続ける。
村にホテルはなくてもホームステイは看板が出ているので容易に見つかる。
相場は二食付きで150ソモニ(1789円)。
ちゃんとしたところならホットシャワーがある。
「マカロニプロフ」と言われたが、プロフの定義上おかしいでしょ。
大陸ではごく一般的に見られるカササギ、日本では見たことないが九州など一部で生息しているらしい。
「これは何?」と聞いたら「パミールギター」だ、と。
動画を撮ったが風の音がうるさくてうまく音を録れなかった。
強い追い風。
追い風が威力を発揮するのはフラットまたは下り坂の舗装道路。
今の状況では路面の悪さと勾配の方が影響大。
かといって向かい風に吹かれるのも嫌だけど。
砂利道もこのレベルになるとこげないので、降りて押して歩く。
車のタイヤ跡が作り出す天然バンプ。
この波状のデコボコは未舗装ではよく見られる現象だが、タジキスタンは特にひどい。
サイクリスト泣かせ、というよりは自転車殺し。
ムリにこの上を走ったらバラバラになってしまうよ。
タジキスタンに入ってから、道路工事している光景を一度も見ていない。
メンテナンスしないと、放置するほど荒れていく一方だよ。
車はバカみたいなスピードを出して走っている。
砂埃を巻き上げ、臭い排気ガスを吐き出し、すれ違いざまにクラクションを鳴らす。
死んでくれ。
せめて村の中を通過する時ぐらいはスピード落とせ。
そしてクラクション鳴らすなバカ。
Sary Tash, Kyrgyz
5721km