しかし道は単純ではない。
険しいアップダウンを繰り返しながら少しずつ高度を下げていく。
下りも傾斜がきついので、ブレーキをかけっぱなしで手が疲れる。
さらに無数のバンプが次々に現れ、せっかくの下りのスピードをいちいち殺さなければならない。
これも今に始まったことではないが、アフリカや中南米など貧しい国ほどドライバーが粗暴になるので、街や村の前後にはバンプが設置されていることが多い。
メキシコのドライバーはだいぶお行儀良くなったから、もうこんなもの壊してしまっていいんじゃないかとも思っていた。
車もいちいちブレーキをかけるので、バンプ周辺で無意味に渋滞が発生することもある。
しかしアメリカから遠ざかるほど、特にベラクルス以降ドライブマナー悪化、車優先(自分優先)的になり、クラクションを鳴らすクズも増加してきた。
まだかれらにはバンプは必要なのかもしれない。
国としては、いつまでもこんなものを残しているのは恥ずべきことだ。
にしても、この山間部の先住民エリアは数が多すぎる。
こんなに執拗につくらなくてもいいし、つくるにしてももっと角度をなだらかにしてもいい。
何にしても、自転車にとってはとばっちり、いい迷惑だ。
ブレーキも摩耗するし、パーツや荷物も衝撃でダメージを食らう。
この日は100kmかけて標高2100mから900mまで下ったが、けっこうハードだった。
下った気があまりしない。
翌日。
標高900mからほぼ0mまで下る日なのだが、朝からいきなり長く険しい登り。
朝出発した街がはるか眼下に。
素直に下らせてくれ。
そして相変わらずバンプの嵐。
そして、再び猛暑。
イヌも多すぎる。
ちゃんと管理しとけや。
メキシコにこんなきれいな川があるとは。
「グリンゴ!」
この山間部で何度か聞こえてきた。
発展を遂げているメキシコで「グリンゴ」なんてもはや死語になっているだろうと思っていたのだが、奥地ではまだ生きているようだ。
「Gringo」は「よそ者」という意味で、元々はスペイン人のギリシャ人に対する呼称だったが、中南米ではアメリカ人に対する蔑称となった。
蔑称といっても、僕を「グリンゴ」と呼ぶのは幼い子供だけで、意味も知らずただ反射的に呼んでいるだけのように見える。
いったん標高0m近くまで下った後、最後に標高400mの峠をかまされた。
舗装道路でこんなにも楽に下らせてくれない下りはなかなかない。
120km進んで、なんとかパレンケの街に到着。
標高80m。
とてつもなく暑い。
汗が吹き出る。
Casa Janaab Palenqueに2泊。
ドミトリー1泊193.5ペソ(1147円)。
円安になっちゃいましたね。
嫌んなっちゃいますね。
欧米チックなホステル。
設備はまあちゃんとしており、きれいな宿だ。
客は白人ばかり。
見たところ、非白人客は僕だけ。
なんでパレンケにこんなに人が集まるのかわからないが、混雑している。
僕よりはるかに強そうなガタイのいい白人女性たちが、半裸同然で闊歩している。
部屋は狭くて窮屈。
2日とも満室、予約してなかったら泊まれなかったかもしれない。
白人旅行者はマナー悪くないし、エアコンもあるので助かるが。
でも最近は個室に慣れてしまったせいか、どうもこの浮かれた空気になじめない。
パレンケの街から遺跡まで8km。
自然保護区域入場料37ペソ(219円)。
遺跡入場料80ペソ(474円)。
パレンケは、7世紀に隆盛したマヤの古代都市遺跡。
エジプトのピラミッドからは王の墓は発見されていないが、このピラミッドからは王の遺体が装飾品とともに発見されている。
遺跡内は思ってたほど混雑してないが、また白人女性が半裸同然の格好で男に写真を撮らせている。
天体観測所。
イグアナ発見。
けっこう近づけた。
遺跡よりイグアナと戯れた時間の方が長くなってしまった。
Chable, Mexico
38620km