きっかけは、ステムがヘシ折れたこと。
こんなことってある!?
いつものようにサイクリング中、曲がろうとしたらハンドルだけが曲がってタイヤは直進し続けたのでビビった。
事故にはならず、宿の近くだったのも幸いだった。
しかし金属疲労でこんな厚いパイプがヘシ折れるなんて。
それから、少し前の話だが、サドルの革のテンション調整ボルトも折れた。
テンションを上げすぎたせいかもしれない。
特殊なネジでまったく同じものはなく、頭にナットの付いた同サイズのネジで代用。
それから、歯も折れた。
毎度のことなのだが、出発前に歯医者で歯を削られてかぶせものをして、旅を始めると間もなくしてかぶせものが取れて、細くなった歯でしばらく食べ続けると、折れる。
これは本当に、旅に出ると必ず起こるトラブル。
今回は目立たないところだからまあいいけど。
日本の歯医者は腕が悪いのかな。
帰国か続行か、の葛藤はずっと続いていた。
過去に経験したことのない世界のこの状況で、何が正解なのかつかめずに時をすごしてきた人は僕だけではないはず。
特にこの停滞生活は、ただメシを食らい、資金が減って体重が増えるだけの日々。
あ、瞬間的にアウトブレイクした僕の体重は一応の収束を見せ、現在80kgで落ち着いている。
いずれにせよ、ここで無為に日々をすごし続けるよりは、日本で仕事して少しでも資金を増やしながら、自転車その他の装備をリニューアルして、態勢を立て直す時間に当てるのが建設的だとの結論に至った。
いや、帰国が妥当なのは前からわかりきっていたことだが、まだ旅を続けたいこの強い感情を自分の中でどう落ち着かせるかが問題だった。
ステムが折れたりいろんなものがボキボキと折れていくのが何かの啓示にも思えて、踏ん切りをつけた。
一部の国が国境を開けるような情報がちらほら出てきているが、あくまで予定なので実際どうなるのか当てにはできないし、陸路の旅においては一部の国だけでなく全体的に開けてくれないと前進できない。
いつになるのか確定されない解除を待ち焦がれながらここに居続けるのは、あまりに長く非生産的な時間だ。
しかし停泊したのがメキシコシティだったのは本当に恵まれていた。
程良く安い物価、物も豊富で、すごしやすい気候、厳しい外出制限もない。
そして、日本への直行便がある。
経由便だと、経由地が封鎖中の国だったら帰国することもできない。
少し前までAeroméxicoが8万円ぐらいで日本まで飛ばしていたが運休になってしまった。
現在はANAが唯一の直行便。
6月9日2:20メキシコシティ発
6月10日6:30成田着
所要14時間10分
12万3110円
到着後の予定は、PCR検査を受けて、2週間自主隔離する。
陰性であれば隔離は不要だと思うのだが、日本の皆さんに安心して会ってもらえるよう、無意味な形式上のことではあるが要請に従うことにする。
フレームとキャリアとスタンドだけ持ち帰る。
その他はここに寄付する。
今や中南米がホットスポットとなった。
ブラジルやペルーほどではないが、メキシコも絶賛拡大中。
6月から経済活動再開ということだったが、実際まだ閉まっている店が多い。
でも街中は確実に人が増えた。
なるようにしかならねえだろ、というラテンのノリが感じられる。
ずっと自炊が続いていて、久々にタコスを食べたら感動的なまでにウマかった。
屋台のある通りを歩き、ローカルフードを頬張り、「ウマいか、アミーゴ?」なんて言われて、ああ、やっぱり旅っていいな。
帰国の決断はしたけど、旅を続けたい感情はなお強くあり、すっきり晴れやかな気分には到底なれないし、気持ちの整理もまだできていない。
女々しいけど、モヤモヤしたままの帰国となりそうです。
そして、物価が上がり、ペソも上がってきている。
経済的な影響がジワジワと見え始めている。
宿では依然として自炊力がメキメキと上がり、プリンづくりがライフワークとなった。
Mexico City, Mexico
42397km