前日までほぼ無風で穏やかな日が続いていたのに、ちょうど出発日から向かい風。
イランよ、そんなに僕を引き止めたいのか。
マシュハドの都市部を抜けると牧草地帯。
路肩に停車していたトラックのドライバーが僕に手を振ってきた。
見おぼえのある白人、と思ったらトルクメニスタン大使館で出会ったオランダ人だった。
彼はこの、1980年製メルセデスのキャンピングカーで大陸横断をしている。
車の中で茶菓子をごちそうになり、小一時間話をした。
オランダから日本へ行き、日本から貨物船で太平洋を越えて、南北アメリカ大陸を縦断する。
彼はまだビザ待機中で、人里離れたところでキャンプ生活をしている。
通りすがりのドライバーからキウイをいただいた。
風はますます強くなってきた。
思いっきり真向かいから吹き付けて来やがる。
なんて憎ったらしい。
峠の少し手前に現れた小さな街。
消防署の前に、荷物を積んだ自転車が停まっているのが見えた。
おそらくここで1泊するつもりなのだろう。
よし、僕も便乗してみよう。
消防署の中に入ってみると、スイス人の女性がいた。
スイスからモンゴルへ向かっている。
彼女は建物内の一室に泊まり、僕は敷地内にテントを張らせてもらうよう頼んだら許可をもらえた。
シャワーも浴びて、洗濯もできて、申し分ない。
スパゲティをゆでて食べ始めた時に、消防隊員が晩飯を差し入れてくれた。
さすがに食べきれない、これは朝飯にまわすことにした。
しかしなんていい人たちなのだろう。
その後、風は予想をはるかに上回るほど猛烈に荒れまくった。
いやー、野宿しなくてよかった。
道路下のトンネルでも、このレベルの風だったらメチャクチャにされていただろう。
翌朝、けっこう登ったと思ったけど標高たった1000mの峠。
イラン最後の峠。
これを下ったら高原走行は終了。
その後はしばらく平地が続く。
下り途中、スイス人に抜かれた。
はえーな。
僕と同年代ぐらいか、あるいは年上に見えたけど。
標高300mまで下って、国境の街サラフスに到着。
明日、国境を越える。
イランリアル。
Sarakhs, Iran
3282km